タイムラブ 愛に時間を〜夏の嵐④
道場を出た絵里は涙を流しながら廊下の壁にこぶしを叩きつけた。
それは勝負に負けた悔しさではなかった。
人と競い、ライバルや上下でしか人間関係が築けなかった彼女にとって夕子の優しさがしみじみと胸に突き刺さったのだ。
道場のほうでは涼が驚いた表情を見せていた。
「夕子、すごいな。まさか柔道をやってたとは。」
‥いいえ、絵里さんもすごいです。私が勝てたのは偶然です。‥
夕子 メモリックスで答えた。
「士郎、絵里も見てきてもらえないか?」
「おれが‥」
「あいつ、突っ張ってるけどほんとは寂しがり屋だから‥」
「よっしゃー任しとけ!」
士郎が道場から出る。
「夕子、実はな、頼みがあるんだ」
‥なんでしようか?‥
「おれたちのバンドに入ってくれないか?」
凉は手を合わせてお願いする。
‥バンドですか。‥
夕子はきょとんとしながらメモリックスを打つ。
「この前きみの家にお邪魔したとき、応接間で立派なグランドピアノを見たんだ。
きみはピアノが弾けるんだろう?」
夕子は頭をこくんと下げる。
「明日部室で練習するんだ。よろしくな!」
凉は夕子が来てくれることに期待をかけた。
BGM ポール・マッカートニー&ウイングス
〜バンド・オン,ザ・ラン
ウイングスが飛躍するきっかけになった3枚目のアルバムタイトル曲。
ゆるゆると始まって徐々にヒートアップするところが最高だね!
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