山田杏奈の演じる本能を見せつけられた『ひらいて』
原作は読んでいない。
綿矢りさ原作。映画『ひらいて』
クラスでも人目を引く主人公の【愛】
彼女の愛する人【たとえ】には秘密の彼女【美雪】がいる。
美雪は愛とは正反対の存在感と佇まいで、
決してたとえの心に入れない愛は、たとえ欲するがゆえ美雪に近づく。
それは、愛の全てをかけた略奪である。
愛を演じた山田杏奈が、本当に劇的に見事で苦しくなるほどだ。
透明感の中にある澱んだ深く暗い闇。
若く未熟で、暴力的で大胆で、馬鹿馬鹿しいほどの瞬発的な感情の爆発。
止められない高揚と哀しみの中にある飢えた欲望が、
山田杏奈の全身から溢れ出ている。
どこにでもいる普通の高校生に見えつつ、鋭利な繊細さと儚さと攻撃性。
そんな女子を演じさせれば、彼女の右に出るものはいないのでは無いかと思う。
【たとえ】にはジャニーズのHiHi Jetsの作間龍斗、
【美雪】を演じたのは芋生悠。
それぞれの個性が光る配役だった。
『愛する人を手に入れられないなら、愛する人が愛する人を奪い手に入れる』
嫉妬という解りやすい方程式ではない、いりくんだ感情に身を任せ思うがままに
美雪を惑わせ、美雪の肉体に触れてもなお、
嫌悪感なのか憎しみなのか、悔しさなのか惨めさなのか、愛おしさなのか∙∙∙
解毒できない感情が全身を蝕んでゆく。
この不思議な感情が素晴らしく映像化されていた。
共感できない人は全く理解不能な映画だろう。
少なくとも私は「苦しさ」は共感し、共鳴した。
愛が美雪で濡れた自分の指を見つめるシーンの“間”は、本当に完璧だった。
「禁断の〜」などという簡単でキャッチーな言葉で片付けるには、
勿体無くないか?この作品。
山田杏奈、あっぱれ
なのである。
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