果たして「無償の愛」はこの世に存在するのか? 『神は見返りを求める』
この作品は年代や立場によって捉え方が極端に違う作品かもしれない。
イベント会社に勤める【田母神】(ムロツヨシ)は、
乗り気でもなかった合コンで、
底辺YouTuberである【ゆりちゃん】(岸井ゆきの)と出会う。
田母神は周りから少し馬鹿にされながらも、
懸命に夢を追い再生回数UP のためにひたすら頑張る彼女を少し不憫に思い、
なんとなく彼女のYouTubeチャンネルを手伝うようになり、彼女の夢を叶えてあげるため、田母神は「見返り」など期待せず献身的にゆりちゃんの制作をサポートしだし、いつしか暗黙のうちパートナーのような関係になっていく。
大した変化もなく、底辺のままで大変ながらも二人三脚で楽しく制作していたYouTubeだったが、ある偶然的なきっかけで合コンで同席していた
田母神の同僚【梅川】(若葉竜也)の紹介で人気YouTuberとゆりちゃんが繋がり
コラボした事をきっかけに、ゆりちゃんは一気にバズりだし∙∙∙∙
田母神とゆりちゃんの関係は壊滅的に変貌していく。
そう。田母神は愛と優しさに満ちた人間。
「見返り」など期待していたわけではなかったはず∙∙∙。だった。
仲良く動画制作をしている時は、本当に仲睦まじく愛に溢れた平和な世界。
なぜなら互いに“なんらかの“利”があるからである。
ところがその関係のバランスが崩れだすと途端に平和だった世界は破滅し
一気にベクトルは”自愛“に向かっていく。
ある人は
『田母神さん可哀想』だし
『田母神さん自業自得』だし
『田母神さんキモい』のだけど
ある人は
『ゆりちゃん可哀想』だし
『ゆりちゃん自業自得』だし
『ゆりちゃんキモい』なのだ。
1つの同じストーリだが、全く両極端な意見があると思う。
ハッキリ言うと、それくらい人間は身勝手で利己的という事だ。
男には男の下心がありきで、
女には女の武器を振りかざす残酷な身勝手さありきなのである。
おだてられれば木に登りがちなのが男だし、
無理強いをするときには上目遣いで残念そうな表情をしがちなのが女。
これは勿論、一般的な極論の偏見であるが(笑
とは言え、
それは恋愛や仕事など関係なく、
男女のパートナーというものにおいてはそれらが根底にあり
実際に互いに需要と供給で成り立っている。のかもしれない
必要とされなくなった時に、片方に愛があれば執拗になりがちで
それを固執と片付けてしまうのは、その片方にとってはあまりにも残酷。
だからこそ、それが「見返り」に変貌していく。
田母神の「愛の善意」という美しい清流が「見返り」という泥流に急激に変わっていく様は、あまりに自然で恐ろしいほどだった。
結果、どっちもどっち。
誰かが誰かを利用して得がある世界では、
自分もいつしかその誰かになってしまいがちなのである。
だからこそ単純な「ありがとう」の言葉が全知全能の尊さを醸し出すのだろう。
何が悪で何が常識かを見失うことの愚かさや恐ろしさがリアル過ぎて
観終わった後に本当にゾッとする。