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読書の記憶

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2019年10月の記事一覧

『シェリ』コレット(光文社古典新訳文庫)

『シェリ』コレット(光文社古典新訳文庫)

登場人物と舞台設定とテーマだけ見ると、腐臭のしそうな小説なのに。なんとも清々としたもの。
終盤、愛と恋とを自覚して受容したがゆえにかえって、平凡な年取った女になりかけた元高級娼婦のレア。そのレアを立ち直らせるのは、シェリの最初で最後の魂からの告白。ここがこの作品の白眉だと思いますね。
ひとは決して自分で自分をかたちづくってるわけじゃないのね。他人という鏡にうつった自分をみながら自分を成形しているの

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『うちゅうの目』まど・みちお(フォイル)

『うちゅうの目』まど・みちお(フォイル)

美容院の待ち時間に。
まど・みちおの誌と奈良美智らの写真を組み合わせた、ツクリはよくわからん本。

透徹した善と真実(という幻想)に触れるために、詩人には存在していてもらいたいものだ。

『時が止まった部屋』小島美羽(原書房)

『時が止まった部屋』小島美羽(原書房)

2019.10.02読了

ドールハウスが好きです。動機としてやや不純でしょうか。この本を手に取るには。

孤独死の現場を再現したミニチュア作品があることを知ったのは確かネット記事。染み出した体液の表現が強く印象に残りました。その後、新聞の書評欄で書籍化されたことを知り、購入。

スケールを変えて、飽くまで似たケースの総体として再現されたものとはいえ、各作品のインパクトは強い。悲惨だとおもう。一方

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