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カイ書林 Webマガ Vol 15 No2

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【好評発売中】

  1. 澤村匡史著:循環器救急・集中治療の高価値医療 日本の高価値医療⑧

  2. 和足孝之・坂口公太編集:医療現場に必要なリーダーシップ・スキル ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.19

  3. 筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18

  4. 杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

  5. 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

  6. 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

  7. 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

  8. 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

  9. 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

  10. 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima (ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)


■2024年度の第6回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャーが好評でした。

『ビッグデータから見えてくるわが国の医療ー持続可能性の観点から』

康永秀生先生(東京大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教授)

2月3日(土)に開催されました。参加者の声を紹介します。

・リアルデータを使った研究を多く紹介してくれ、とても勉強になった
・real worldでのbig data分析の実例。RCTのアプローチだけでは限界のある分野であり、遺族調査や限定的な薬剤使用調査結果など組み合わせながら、より実証的に、有効な(無価値な)医療や看護の提案をすることを試みています。このような領域の研究がさらに展開できたらと願っています。
・エビデンスに基づく政策立案、アレルギーど、民間療法など多い領域には興味があります。
・実臨床、外来でも実際患者さんにデーターなどを利用してお話できるようなことがあるのではないかと感じました。コロナワクチンに関して、抗菌薬に関してなど、日常的にご質問いただくことも大変多く、エビデンスに基づいて説明できるといいといつも感じています。

次回のCWJ オンライン・レクチャーの講師はChoosing Wisely Japan代表の小泉俊三先生。日程:4月4日(木)19:30~21:00です。詳細は近日ご案内します。


■全国ジェネラリストリポート

内科系全般、プライマリ・ケアから集中治療まで幅広く対応し続ける

医療法人徳洲会 大隅鹿屋病院 副院長 内科部長
田村 幸大

循環器内科より相談をいただいたその患者さんはカテコールアミンの持続点滴をしても血圧は80台、ベッド上で動くだけでも呼吸困難が生じる状態で、EFは8%、Crは5mg/dLであった。「透析をしたいけど循環動態が悪すぎる。何か手立てはないか?」と。外科医、麻酔科医の協力の下、腹膜透析カテーテルを留置し、腹膜透析の導入に成功した。時間はかかったが体液量管理、薬剤調整をすることで驚くほど心機能が改善し、今では元気に外来通院されている。
大隅半島は鹿児島県の東側に位置する大きな半島で面積は東京都とほぼ同じである。人口は約22万人で高齢化、過疎化の荒波をかぶっている。当院内科はその大隅半島の中核病院として、内科系全般、プライマリ・ケアから集中治療まで幅広く対応し続けている。
その幅広く対応する事項の中には透析導入・管理も含まれている。「透析」というと「血液透析」を指していることが多く、あえて「血液透析」と言わないことが多い。実際、透析医学会の調査でも透析患者の97%が血液透析、3%が腹膜透析となっている。そんな透析の世界でもマイナーな治療である腹膜透析に18年前から取り組んで、これまで100名近くの方を腹膜透析に導入してきた。
80代の2人に1人はCKDを持つ時代の中、腹膜透析という選択肢を持っておくことは治療の幅を拡げることにつながっており、総合内科医としてのやり甲斐を感じる場面となっている。


■マンスリー・ジャーナルクラブ

尿酸値と痛風の再発

福井 翔
Section of Clinical Science, Division of Rheumatology, Inflammation, and Immunity,Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School

[文献]
McCormick N, Yokose C, Challener GJ, Joshi AD, Tanikella S, Choi HK. Serum Urate and Recurrent Gout. JAMA. 2024 Feb 6;331(5):417-424.

[内容の要旨]
背景・目的:
尿酸値が痛風の再発を予測するのに役立つかどうかは分かっていない。痛風の既往歴がある患者において、尿酸値がその後の痛風発作および痛風による入院のリスクと関連するかを評価した。

方法:
2006年から2010年の間に痛風の既往歴が同定されたUK Biobank登録患者を対象とした後ろ向き研究。2017年までプライマリケア連携データ(外来)、2020年までの入院統計データベースを通じて、対象患者はフォローアップされた。暴露はUK Biobank登録時の血清尿酸値。アウトカムは痛風の再発率、および交絡因子調整後の再発率。

結果:
痛風の既往がある3613人の患者(平均60歳、男性86%)を平均8.3年フォローアップすると1773回の痛風発作が発生した。1679回(95%)が尿酸値6 mg/dL以上、1731回(98%)が5 mg/dL以上の人々で発生した。急性痛風発作の再発率 (1000人年あたり)はベースラインの尿酸値<6 mg/dLで 10.6、6.0~6.9 mg/dLで40.1、7.0~7.9 mg/dLで82.0、8.0~8.9 mg/dLで101.3、9.0~9.9 mg/dLの尿酸レベルで125.3、≧10 mg/dLで132.8であった。その再発率比はベースラインの尿酸値<6 mg/dLを基準とすると、それぞれ10年間で3.37、6.93、8.67、10.81、11.42であり、尿酸値1 mg/dLの上昇あたり1.61 [1.54-1.68]であった。入院を要する痛風の罹患率も、上記と同様に、尿酸値の上昇とともに増加した。

結論:
痛風の既往歴がある患者では、1回測定された尿酸値がその後の痛風発作の再発、および痛風による入院率と関連した。痛風患者のフォローアップにおける再発のリスクを評価するために尿酸値は有用である。

[コメント]
痛風はプライマリ・ケアでも遭遇するコモンな疾患です。しかし膠原病科医からすると、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどと比べ、まだまだ研究やエビデンスの乏しい領域です。今回の報告も、“尿酸値が高いと痛風の再発が多い”という、当たり前のように感じられる結果ですが、特に痛風の再発についてのデータは乏しいため、JAMAに掲載されたと考えられます。痛風患者において、どのような患者でどの程度に尿酸値をコントロールするのが良いか? ということを判断する根拠もまだまだ乏しいのが現状です (※2020年のアメリカリウマチ学会のガイドラインでは6mg/dLをtargetとしています)。尿酸の(厳格な)コントロールを行うのか、より対症療法的な治療で十分なのかという点についても、現在アメリカで大規模な治験が行われています。

■カイ書林図書館

Coming soon ! 草場鉄周先生監修「総合診療・家庭医療のエッセンス 第2版」

2012刊行の初版の全面改訂版が、4月刊行予定で進行しています。
本書は3部構成、全10章で構成されます。
本づくりの側面から特筆されるのが、執筆者の力作原稿を、監修者、編集者の先生方がほぼ毎週編集会議を行い、リアルタイムで意見交換を行っていることです。
こうすることで総合診療・家庭医療のエッセンスが理論と実際の両面から浮彫りされてきます。
従来共著の本は、「Book without Author; 著者のない本」と悪口を言われてきましたが、本書は、「単著本を上回る共著本」となります。ご期待ください。

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