カイ書林 Webマガ Vol 14 No7

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【近日刊行】

・和足孝之・坂口公太編集:医療現場に必要なリーダーシップ・スキル
Case Discussion と19編の依頼論文および特別論文3編を収載しています。
ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.19
8月末刊行、160ページ、予価 3000円

【好評発売中】

  1. 筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18

  2. 杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

  3. 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

  4. 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

  5. ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか?:梶有貴、長崎一哉 編集.ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

  6. 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

  7. 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

  8. 鎌田一宏・東光久編集:再生地域医療in Fukushima (ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16

  9. 東光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット (日常診療ツールキットシリーズ③)

  10. 金子惇・朴大昊監訳「医療の不確実性をマッピングする」


■2023年度 第3回Choosing Wisely Japan オンライン・レクチャーのご案内

「医療現場で求められる放射線検査の賢い選択」

対話篇:
 隈丸加奈子 先生 順天堂大学医学部放射線診断学講座
 加藤英幸 先生  千葉大学医学部附属病院放射線部
 小泉俊三 先生  Choosing Wisely Japan代表

8月19日(土)14:00~15:30
方法:オンライン(Zoom)講演と質疑応答

Choosing Wisely(賢明な選択)は、医療者と患者が対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)を「賢明に選択」することをめざす、国際的なキャンペーン活動です。
Choosing Wisely Japan は、日本でChoosing Wisely を推進するため、2016 年より活動しています。今回のセミナーでは、「医療現場で求められる放射線検査の賢い選択」と題して、Choosing Wisely の観点から、3先生が対話します。この機会にぜひご参加ください。なお参加申し込みの方には事前収録したビデオ「我が国の放射線画像診断の現状や課題」を提供します。

主催:Choosing Wisely Japan
参加費:1,500 円


■全国ジェネラリストリポート

隠岐広域連合立隠岐病院 小川将也

辺境で越境学習

人口約1万4千人をカバーする島唯一の病院で内科医として勤めて4年目になる。
島での勤務を始めた1年目は、業務に追われ家と病院の行き来ばかりであった。当時の私は、「医学生や研修医の世界」では優秀な方だったため、自分が偉くて正しいと勘違いしていたと思う。正論ばかり押し付けて、患者さんと衝突することもあった。
特に、一生懸命に正しい処置をして搬送した患者さんから、後日対応が悪かったとクレームが来たことは忘れられない。そんな時に、当時メンターから、「なんでもいい、医学から離れた分野で越境学習をしなさい」と言われた。最初はよく分からず、なんとなく素潜りを始めた。やってみると離島ならではの美しい海に一目惚れをした。それからは、時間があれば、海に詳しい職員や外来の漁師にコツ教えてもらうようになった。毎年技術磨きをして、魚突きまで始めた。もちろん「素潜りの世界」では、まだ素人である。医学から離れた世界に飛び込んでみた結果、「医学の世界」は全体のごく一部で、私自身は「人間としては」まだ未熟者だと気づかされた。越境学習を始めて、自分の身の程を俯瞰できるようになり、他者に対して尊敬できるようになった。今では、より患者目線に近づけたし、患者さんから学ばせて頂くことも多い。
今年も「医学の世界」だけに固執せず、畑やマラソン、船舶免許の取得など、離島という辺境だからこそ深く味わえる越境学習に励むつもりである。

■マンスリー・ジャーナルクラブ

岡山家庭医療センター/ 奈義ファミリークリニック 横田 雄也

医師が患者の話に途中で割り込むことは、しばしば患者に協力的である

Plug I, van Dulmen S, Stommel W, olde Hartman TC, Das E. Physicians’ and patients’ interruptions in clinical practice: A quantitative analysis. Ann Fam Med. 2022 Sep 1;20(5):423–9.

目的:プライマリ・ケア医と患者が診察中にいつ、どのように相手の話に割り込むかを検討し、医師-患者間の対話における割り込みについて体系的に分析すること。

方法:17人のプライマリ・ケア医と84人の一般的な身体症状を持つ患者が参加し、84の診察の中の会話を対象に、割り込みのタイプ(説明を加えたり合意を示すような「協力的な割り込み」か、話題を転換したり意見を対立させるような「侵入的な割り込み」か)をコード化し、立場(医師か患者)や性別、診療の局面(問題提示、診断、治療計画など)を予測因子として、混合効果ロジスティック回帰モデルを用いて定量的に分析した。

結果:観察された割り込みの数は2,405件で、そのうち82.9%は協力的な割り込みであった。医師では、男性が女性よりも侵入的な割り込みをする可能性が高かった(β = 0.43; SE, 0.21; オッズ比 [OR] = 1.54; 95% CI, 1.03-2.31)。

結論: 医師-患者間の会話における割り込みは、しばしば協力的な行動であり、医師と患者の関係を向上させる可能性がある。

コメント:「患者がはなし終わるまでは口を挟んではいけない」と、医療者は規範的に教えられてきました。ただ、話に割り込むことには必ずしもネガティブな側面だけではなく、ポジティブな側面もあるのではないかと、言われてみれば私もどこか実感しておりました。そういった「日々の臨床でなんとなく感じていること」に着目した本研究にとても感心しました。基本的には相手の話に割り込まずに耳を傾けることが求められますが、ひとつのテクニックとして協力的な割り込みもあるのだと知っておくことには損はないかと思います。


■カイ書林図書館

第2回Choosing Wisely Japan オンライン・レクチャーは、徳田安春先生が、6月3日「コロナ2019(COVID-19)医療情報〜混乱の検証〜」と題して、Choosing Wiselyの観点から、適正な医療の推進のための医療情報について講演しました。
その参加者の声を紹介します。

  • 医師・市民(患者を含む)の双方に求められる自立的当事者意識につながる極めて大切な考え方であると理解しました。

  • このような研修で知識をアップデートしたいと思います。

  • 今後も、同様の企画を期待します。ワクチンについても、お聞きしたかった。

  • かつて医療情報の発信に関係していたものとして、「賢明な選択」をどう患者に伝えるか、考えさせられました。

  • 医師・市民(患者を含む)の双方に求められる自立的当事者意識につながる極めて貴重な講演でした。

  • 後世のために、何事も検証がしっかりとするべきと思います。

  • データに基づく議論の重要性を改めて教えてもらった。勉強になりました。

  • このような考え方は、医療従事者もさることながら、一般の人達への紹介が重要であると感じました。

*この講演の記録は、Choosing Wisely Japanの会員の皆様に提供されます。


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