短編小説 老兵
周りに見られ、頼ってばかりの狭い世界だったが充実した毎日。もう何年たっただろうか。
同い年や年の近い物は皆死んだ。
重たくなる目蓋を感じながら私は思う。
もうそろそろお迎えが来るだろう。
子や孫は沢山いたが会ってない子も多い。
はるか彼方で暮らしている者、私より早く亡くなった馬鹿も沢山いた。
動きは日に日に遅く鈍重になり、食も細くなる。老いとは逆らえないものだ。
戦争の時私は子で満足な食事もなく狭い場所で生きるしかなかった。
それが今や食事で文句を言える時代になるとは夢にも思うまい。
孫や子には食事を好き嫌いを言っても良いが出された物を食べよといつも言ってきた。
それがせめてもの食事への礼儀であろう。
老体の戯言でしか聴いてないのかも知れないがそれが平和になった証ならそれでいい。
若い者には知らぬ方が良いことが沢山ある。
入れるべきことも沢山ある。
せめて身体がいう事を聞くのであれば最後に広い世界を思いきり走りたかった。
まぁいいさ、そろそろ終わりにしよう。
口数の多い老いぼれほど格好悪い物は無いのでな。
亀の生涯も悪くない。寝かせてもらおう。
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