開かずの宝箱
学校からの帰り道、古ぼけた鍵を見つけた。クローバーの茎をすっと伸ばしたような、ゲームに出てくるみたいな、かっこいいやつ。
どこの鍵かわからないし落ちていたものだから、捨てなさいよって母さんは嫌な顔をしたけど、夢見がちだった僕は鍵を洗い、紐を通して首から下げた。鍵が合う扉はないかと探検に出かけ、どこかのお城の鍵かも、なんてにやにやした。
社会人になって家を出て、人並みに恋なぞして、鍵は鞄の奥底に仕舞われた。――彼女の家にお呼ばれして、「開かずの宝箱」の話を聞くまでは。
奇跡か、運命か、宝箱は開いた。折り紙、ビー玉、毛糸、それから、きらきらの石がついたおもちゃの指輪。
顔を見合わせ、ふたりで笑う。
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「Twitter300字ss」企画参加作品 第65回/お題「鍵」
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