UberEatsから紐解くフードデリバリー業界
ライドシェアの元祖として世界で最も知られるサービスとなったUberのサブビジネス感覚の立ち位置だったUberEatsが実は今、その本業を追い抜く伸びを見せている。
そんな、日本に新しいフードデリバリーのビジネスモデルを取り入れたUberEatsの現状から、日本のフードデリバリー業界はどんな構図なのかを紐解いていきます。
最初の方は、UberEatsについて書いているので、フードデリバリー 業界(出前業界)に興味があるんだ!という方は、【市場動向】から【競争関係】の部分を読んで見てください。
【決算内容】
Uberが米国市場に上場(2019年5月)して、もう1年が経ちました。はじめは、この一年でどれだけ成長し、これからどんな部分に期待できるのかについてお話しします。
Uberの2020年1Qの決算報告から引用しています。
UberEatsの純収益が前年同期の$239Mから$527Mと、2倍以上に成長しています。ライドシェア事業の純収益は前年同期比+4%という数字からも、圧倒的な伸びであることがわかります。
こちらのスライドからは、大規模キャンペーンでGrossBookings(取扱高)の伸びに対して、NetRevenue(純収益)が追いついていない印象ですが、Q1 20はテイクレートを上げて、純収益 YoY+26.9%の伸びを見せています。
新規顧客、もしくはアクティブユーザー数獲得のために、CMや還元キャンペーンなど大々的にしているイメージですが、今年(2020年)に入ってからテイクレートを上げて利益を伸ばしてきていることから、新たなフェーズに移ったように思えます。
今後は、順調なUberEatsで利益と顧客を獲得しながら、ライドシェア事業や他のモビリティー技術を生かした新たなビジネスへと経済圏を広げていきたいところです。
まとめ
Uberとしては、足を引っ張っているライドシェアをどうにかしたいだろうが、UberEatsに限れば利用者も増えて、収益も安定して伸びている。
【参入障壁】
UberEatsのようなシェアリングエコノミー モデルのビジネスは、マッチングプラットフォームといえます。
UberEatsの場合は、「売りたい人、運びたい(働きたい)人、買いたい人」を繋げる世界規模のプラットフォームです。
ここまで読むと、参入障壁は高いと思われますが、実はそうでもないです。
例えば、同じプラットフォーマーでも "Airbnb" (「空き部屋を貸したい人」と、「宿泊するために借りたい人」を繋げる世界規模のプラットフォーム)の場合は、世界規模であることが主力の強みになります。つまり、ネットワーク効果(ネットワークエフェクト)が効くので、中小企業がライバルになることはありません。
対して、UberEats は同じ世界規模のマッチングプラットフォームでもフードデリバリーというビジネスの特性上、ローカル都市ベースの勝負になります。つまり、都市別にネットワークが構築されるので、その都市ごとにライバル企業を持つことになります。
まとめ
Airbnbは、世界中に選択肢があることによってスケールするが、
UberEatsは、世界中に配達員がいても、ユーザにとってメリットはない。
世界規模のマッチングプラットフォームではあるが、参入障壁はそこまで高くない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、ここまでは世界基準で活躍するUberEatsの実態について触れてきました。ここからは、日本のフードデリバリー市場がどうなっているのかについても注目してみます。
【市場動向】
出前市場規模は、2019年時点で 約5000億円(ラーメン業界の市場規模とほぼ同じ)で2015年から比較して約15%も規模が拡大と、安定して成長してきました。
コロナウィルス感染拡大の影響を大きく受けた、2020年3月の外食・中食市場規模は、YoY-20.4% となりましたが、そのなかテイクアウト・出前は YoY+16% との結果でした。
※NPD Japan, エヌピーディー・ジャパン調べ
まとめ
様々な社会背景から中食市場規模と比例して、安定した成長を見せていた出前市場規模であり、パンデミックによる需要増加で爆発的な成長が期待できる中、その後どれだけ社会に合わせたサービスモデルを作れるか。
【競争関係】
ここではUberEatsから見た日本での競争関係についてまとめています。
まず、プラットフォームとしてライバル関係にあるのは、"出前館"。
NTTドコモの「dデリバリー」やLINEの「LINEデリマ」などにプラットフォーム提供を進めて、出前市場での存在感は圧倒的です。
一般人を配達スタッフとして活用する、同じビジネスモデルで対抗するのは、"DiDi Food" 。
Uber Eats と同じように、ライドシェアの仕組みを取り入れ、シェアリングデリバリーを実現させています。
出前館と並んで名前をあげられることが多いのは、 "楽天デリバリー"。
こちらは、楽天経済圏で独自のポジションを確立しています。
まとめ
UberEatsも含めた、業界全体のポジショニングをまとめました。
"出前館" は、同じ土俵には敵なしといった感じで、新たに隣(シェアリングデリバリーモデル)に参入しはじめました。ただし、マッチング技術もモビリティーに関するノウハウも持っていないため、新聞配達員を起用した新たなモデルで挑んでいます。
"DiDi Food" "UberEats"は、交通手段のマッチング技術を活用したビジネスの一部で、今後モビリティーのプラットフォーマーとして、経済圏の確立を目指します。
"楽天デリバリー" "dデリバリー" "LINEデリマ" こちらは、既に確立している経済権をどう広げ、ライバル企業からどう奪うかの戦いになります。
"PayPayダッシュ" は、既に大規模な還元キャンペーンでユーザを獲得している強みを最大限活かすように、これまで誰もいなかったポジションに参入しています。
※現在はまだテストサービス段階です。
こうしてフードデリバリー業界の構図をみると、"出前館" 以外は、メインを生かしたサブビジネスといった感じで、メインビジネス(もしくは母体)の成長に比例して、伸ばしていくといった感じです。
〜余談〜
これから参入予定の "PayPayダッシュ" も含めて、
楽天デリバリー以外はこの出前業界、全てソフトバンクの傘下もしくは出資先なのです。今後ソフトバンクが、どう事業を整理していくのかがポイントとなりそうです。
随時、新たな情報や調査報告から、これからの外食・中食産業についてnoteを更新していくので、フォローよろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?