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秩父宮と横浜

好きなスタジアムは、秩父宮ラグビー場。

緊張感で静まり返るスタンドに地響きとなって押し寄せる、選手の走る音、選手のぶつかる音。
次の瞬間、緊張から解き放たれたスタンドから一斉に湧き上がる、興奮と歓声、時に落胆。
グラウンドとスタンドの距離が近い秩父宮ラグビー場ならではの共振は、試合に没頭させてくれる。

そして、秩父宮ラグビー場ほど足繁く訪れてはいないけれど、忘れられないスタジアムは横浜国際総合競技場(日産スタジアム)。

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「イチ押しのラグビー名勝負は?」と聞かれても答えようがないけれど、「棺桶に入れて欲しい試合は?」と聞かれたら(聞かれる?)、「2019年10月13日の日本vs.スコットランド戦」と即答できる。
名勝負ならワールドカップに限らずとも良い試合はたくさんあるし、世界のどこかで、今日も名勝負は生まれている。

私が初めて「ラグビー面白い!」と思ったのは、2003年の第5回ラグビーワールドカップオーストラリア大会、日本vs.スコットランド戦。
その時の楽しかったパブリックビューイング補正があったことは否めないけれど、大画面に映し出されるプレーは迫力があって全然飽きなかったし、試合終了の笛には「あー、もっと見たい」と思い、そこからぼちぼちとスタジアムに行ってラグビーを見るようにもなった。

2015年の第8回イングランド大会では、日本を『大会史上最強の敗者』にしたスコットランドに「ワールドカップの借りはワールドカップで返す!くっそー!!」と言えるところまで来たことが、そりゃ悔しかったけど嬉しかったし楽しかった。
運命なのかなんなのか、日本大会のプール組分け抽選で日本とスコットランドはまたしても同じプールになり、その後は自国開催に向けて増えた強豪国とのテストマッチを「これじゃあスコットランドに勝てないよ!」とハラハラしながら見ていた。

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そして、多くのファンが直面していたであろう、日本大会のチケット買えない問題。
1年以上も前から行われていたチケット先行抽選販売には悉くハズれていて、一般販売の開始を待って並ぶしかなかった。
販売開始時刻の夕方6時ジャストにアクセスしたら、私の前にはすでに5万人を超える人が並んでいて、順番が回ってきたのは日付も変わった夜中の1時だったか2時だったか。
「もう売り切れちゃってるかも(泣)」からの「残ってるうううううう!!寝落ちしなくて良かったああああ!!」と真夜中に噴出したアドレナリンによって、躊躇うことなくカテゴリーAをゲット。

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そして迎えた、2019年10月13日。
決勝トーナメント進出のためには「引き分けではダメ。勝たなきゃダメ」というところまで追い込まれていた上に、「台風だからって、試合中止で引き分けになったらうちは決勝トーナメント行けないんだけどどうしてくれんの?」と自ら追い込んでいくスタイルをとった本気のスコットランドに、ジャパンは横浜国際総合競技場で勝った。
ホームアドバンテージ?知らんがな。
4年前はわりとご近所開催かつ初戦でフレッシュなスコットランドに対して、日本は初戦の南アフリカ戦勝利から中3日で満身創痍だったんだ。

ハーフタイムにトイレ渋滞に巻き込まれて、後半すぐの福岡選手のトライを見逃した私に「今、日本のめっちゃいいトライあったよ!」と教えてくれた隣席のスコットランド人は、レイドロー選手が日本のトップリーグに来ると知って驚いただろうなあ。

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心に残る試合はたくさんあるけれど、このスコットランド戦だけは別格で、横浜国際総合競技場は特別なスタジアムです。

そして迎えた準々決勝ー。
日本代表を信じ切ることができなかった多くの日本人は10月19日にニュージーランドvs.アイルランドを観戦し、アイルランド代表を信じ切っていた多くのアイルランド人は10月20日に日本vs.南アフリカを観戦した。
私はボーデン・バレット選手のトライを目の前で見てましたけどね。

#好きなスタジアム

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