リトルガールと警官

短編小説 ぼくの大好きな小さな女性

 ぼくは、九州リトルタウンに住むたった一人の大きな人間だ。仕事は警察官である。

 現在の世界人口は、2000年に約60億人だったが、2050年に97億人となり、2100年のいま、112億人になった。こうした人口増加のなか、小さな人間を出産する女性が50年ほど前から出現し、今では年間に生まれる赤ちゃんの1パーセントを占めるまでになっている。
 5センチほどの赤ちゃんで、大人になっても身長は30センチ前後。小さな人間は、リトル・ピープルと呼ばれた。リトル・ピープルの誕生は、人口増加に対応する人間の進化だ、という科学者もいる。
 リトル・ピープルの人口増に慌てた政府は、リトル・ピープルだけが住むことのできる町をつくった。リトルタウンである。
 女性がリトル・ピープルを生むと、6歳までは親元で暮らし、7歳になった時点でリトルタウンに住む里親に預けられる。20歳になるまで里親とくらし、その後どうするかは、本人の判断にゆだねられる。
 リトルタウンに移すのは、小さな人間が大きな人間と一緒に暮らすのは危険すぎるためだ。もちろん強制ではないが、リトルタウンには小学校から大学まであり、子どものためを思うと里子に出すしかなかった。
 日本にはリトルタウンが10カ所ある。ぼくは、そのひとつの九州リトルタウンで警察官をやっている。九州リトルタウンに住む、リトル・ピープルではないたった一人の大きな人間で、リトルランドの治安を守っている。助手が数人いるが、みんなリトル・ピープルだ。
 犯罪はほとんどなく、のんびり暮らしている。家を建てるのを手伝ったり、穴掘りや河川工事などを手伝うこともある。大きな人間であるぼくは、重機のような存在で、リトルランドの人々にとっては重宝する存在でもあるのだ。
 今では年に900人前後の子どもが、九州リトルタウンに里子として移送されてくる。
 7歳前後の子どもばかりだが、なかには大人になったリトル・ピープルもいる。両親が子どもを里親に出すのを嫌がり、手元で育てていたが、いろんな事情でそれができなくなったためである。
 1ヵ月前にやってきたのは16歳の少女だった。父親と二人で暮らしていたが、父親が交通事故で亡くなり、リトルタウンにやってきた。いまは里親と暮らしながら、高校に通っているが、なかなか馴染めないようだ。どうしてぼくがそれを知っているかというと、その少女が学校にもいかず、毎日のように海岸の堤防に坐って海を見ているのを見かけるからだ。
 ぼくが、側に寄って声をかけても、最初は返事もしなかった。いまは、少しは会話らしいやりとりができるまでになっている。それが楽しい。

 少女のことがとても気になる。放ってはおけない。少女がリトルタウンに馴染めるよう、できるだけのことをしてやりたい。毎日、ただ会いたいと思う。人は、それを恋というかもしれない。そうなのだろうか?

リトルガールと警官2


マンガだけに集中した生活ができたら!! 夢はいつか現実しますか? 私はあなたに何をバトンタッチできるでしょうか。