16. 誤って葉を摘み、枝を尋ぬること莫くんば好し
さきほどの「つぶやき」は、妙心寺のご開山であられる関山慧玄禅師(無相大師)のご遺誡の最後の部分です。
妙心開山無相大師遺誡(抄)
汝等請務其本
白雲感百丈之大功
虎丘歎白雲之遺訓
先規如茲
誤而莫摘葉尋枝好
書き下し文を記しておきます。
汝等請う、其の本を務めよ
白雲は百丈の大功を感じ
虎丘は白雲の遺訓を歎ず
先規茲の如し
誤って葉を摘み枝を尋ぬること莫んば好し
このご遺誡に初めて出合ったのは、役所広司主演『宮本武蔵』(NHK新大型時代劇第一作、1984年4月4日~1985年3月13日放映)の中です。実に豪華キャストでした。再放送でも集中的に観ました。これだけ各シーンが心に残っている作品は他にありません。役所広司20代最後の傑作でしょう。
津川雅彦扮する沢庵宗彭(1573〜1646 臨済宗の僧)が、心に迷いがある武蔵に授けた文言です。このシーン、忘れられません。
今、新しい分野で活躍している人は、基本となる型をまずマスターした人達です。どんな樹かわかってから自分らしさを加えて伸びているのですね。
ところが、それを批判する枝側の人もいます。その本こそが唯一と考え、その自分らしさが気に入らないのです。
批判された人は、破門されてでも先へ進み、その人が大成していたりもします。時代に合わせて間口を広くし、もっと奥を見たい人は幹に行きつく。
ですから、無相大師のご遺誡をそのまま飲み込むのではなく、複層的に捉えたいと思っています。
(1)基本を継承するグループ
(2)基本をマスターしてからアレンジするグループ
(1)が絶えると、その伝統・智慧は消えてしまう
(2)が発展すると、(1)が振り返られる
どちらも大切です。持ちつ持たれつ。
時代は変化していくのです。
基本的にこのように文化は発展していきます。
お互いを批判しないことが肝要ではないでしょうか。
お互い、寛容さが大切。
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