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演劇のおもしろい 第7回 オンラインの稽古って、みんなどうしてる?

このシーズンも今日で第7回目。
後半に入って来た。

お盆休みをはさんで、前回から2週間ぶりのレッスン。その間にコロナの感染拡大が進む。北海道はお盆を過ぎると、夏休みが終り学校が始まる。この基礎クラスは学生も多い。
まずは安心して演劇活動を続けるのが第一。オンラインで参加して欲しい。

レッスン内容も、よりオンラインで可能なものを中心に据えてみる。軌道修正。
とはいっても、簡単ではない。

みんなどうやって稽古してるのだろう?

いや、稽古だと少し違うのかもしれない。特に経験ある俳優が集まっているのであれば、作業を見直すことでクリアできるところも多いのかもしれない。
台本を読み込む、台本をもとにイメージを立ち上げる、共有する、本番の舞台を想定して対策をしつつ動線や芝居のリズムを決めていくといったこともできそうな気がする。

しかし、この基礎クラスは演劇の肝を確認しようという時間だ。参加者も経験の浅い者が多い。演じる、舞台に上がる、といった前に舞台観劇の経験自体が少ない。「レッスンはサボっていいから、その時間とお金で芝居を観てきなさい」とよく言ってしまうが、冗談ではなく本当にそうなのだ。

特に地方では、東京のように毎日あちこちの劇場で舞台が上演されているわけではない。上演も週末に向けて組まれ、一週間以上ステージが続く公演はごくごく限られている。
ほんと観て欲しい。話はそれからなのだ。

しかし、「話はそれから」にしないで、演劇のおもしろいところをしっかと掴んでもらいましょう!というのが、このクラスの意図するところで、そうすることで実際に観劇した時に、より多くの情報や刺激を舞台から受け取れる。
舞台を見慣れないお客さんが「おもしろかった」「むずかしかった」ですんでしまう舞台でも、観ようによっては…こちらの舞台への感度、俳優への感度、言葉への感度が高ければ、ちがった風景が見えてくる。
舞台をとらえる解像度は上げられる。

そういった時間なのだ。


まずはウォーミングアップ。

オンラインで、どうやってウォーミングアップをするか。大変悩むところなのだけれど、とりあえずジャンケンをしてみる。
王様ジャンケン。

オンラインでジェンケンは難しい。通信環境によって、時間差ができる。同時に聴くことができる声も限られている。正直いって、後だしジャンケンされても、ズルをしたのか全くわからない。
でも試してみるんだな、これが。

参加者の身体をあたためるというより、オンラインでのコミュニケーションそれ自体をあたためるためのウォーミングアップといったところか。

王様ジャンケンの次は、

あなたの知らないジャンケン

どうもニシワキはメニューをテレビ番組からもってくるな。
といっても、学生が多い参加者の中でお昼のワイドショーの「あなたの知らない世界」を知っている者がいるとは思えない。いや、「マツコの知らない世界」なら知っているか。
いいですか、学生諸君。「マツコの知らない世界」というタイトルは、その昔「あなたの知らない世界」という心霊特集コーナーが「お昼のワイドショー」という番組にありまして、そこからいただいたタイトルなんです。夏休みのお盆前の季節になると、ギンギンギラギラの真っ昼間に子どもたちは怪談や心霊写真にキャッキャッキャッキャいって騒いでいたんですよ。
ダメだ、話が脱線している。

(注)
「あなたの知らないジャンケン」は、普通のグーチョキパーのジャンケンからはじまって、それまで見たことない形のグーチョキパーにしていくというからだを使った楽しいゲームです。

さて、あったまったところで。
まずは「場」をつくることを思い出してもらう。

言わせたもん勝ち

場所は喫茶店。
マスターがいて、店員がいて、お客さんがいる。
ミッションは、マスターに決められたキーワードを言わせること。

今日は「まずいな」を言わせたい。

それぞれの役割で演じつつ、なんとかマスターが「まずいな」と言う方向に話題を持っていく。

ゲームだと思って、やってみよう!
楽しみつつ、頭の中の「場」を支える回路が開いていること。

本題は、こちら。

テーブルの二人

場所は同じく喫茶店。
テーブルを挟んで二人が向かい合って座っている。
ひとりは今すぐこの場所から出ていきたい。急な用事ができたのか、仕事を思い出したのか、理由は演じる者が決めてかまわない、とにかくこの場を離れなければならない切実な理由がある。
もうひとりは、相手を行かせたくない。今、この場で、話さなければならないこと、二人でやらなければならないことがどうしてもある。こちらもその切羽詰まっている訳は、演じる者が決めていいい。

演者の性別や年齢で、二人の関係を決める。
それもなるべく身近な役割を当てるようにする。
たとえば年齢が離れていれば上司と部下。もっと離れていれば親子。近ければ兄弟や恋人など。
未婚や子どもがいない者に無理に「親」の役を演じさせる必要はない。演者が想像しやすい「関係」を第一に考える。

決めるのは、そのくらい。
あとは、二人に任せる。

この日は、きっかけのセリフを作ることにした。
この場を離れなくてはならない方が、「じゃ、行くね」ということに。
これも関係によって「行きます」や「じゃ」だけでもいい。とにかく、この場を立ち去ることを告げるところからはじまることにする。

これ、必ずしも決める必要はない。
それこそ二人に任せてはじめてもらってもいい。しばらく沈黙が流れるかもしれないが、それはそれで、より演劇的時間が生れたりもする。

zoomでの参加者はどうしようかと…

と考えて、設定を遠距離恋愛の男女にしてみた。
席を離れる代わりに、画面に手を伸ばし「退出」のボタンを押そうとすると、相手から「待って、待って!」と声がかかる。

各々が考えた切実な理由から、そして目の前の相手の言葉によって、なんとか今やらなければならない「目的」を達成しようとする。

今日は予告編程度にして、次回掘り下げることにするが、「なぜ今それをしなければならないのか」という動機は「より切実に」。
「どのようにそれを成すのか」「実際に今何をしなければならないのか」といった目的は「より具体的に」というのが、ひとつポイントになる。

推理物の取り調べのようなものかもしれない。
犯人に「どうしてこんなことを…動機は?」「犯行に使った凶器はなんだ?」みたいな問いです。
で、この「なぜ」と「どのように」が明かされると、まあ事件も解決か…となるわけで、逆に「なぜ」と「どのように」がありきたりだと、あまりできのいい推理ものとは言えない。

あ、いや、奇をてらった設定にということではない。
ではなくて、たとえばよくあるのが、「今、おじいちゃんが病院に運ばれて」ってなるパターン。身内の大切な人の生死は、最も切実な場面ですから「より切実に」となれば、そうなりがち。
その時に、相手が「それは、大変だ…」とならずに、それでも粘って引き止める、5分だけ、1分でもといって、足止めをする。それは考えなしのろくでなしかもしれないけど、ドラマとしてはそこからおもしろくなっていく予感がしませんか。そこまでして、彼は何をしたいのかと。


というわけで、続きます。

また来週。


追記

「テーブルの二人」は、たしかピーター・ブルックさんが本の中で紹介していた稽古だったよな…と思って確認のために本を開いてみたが、違った。
あれ?
どこで知ったんだ、自分?

誰か知ってたら教えてください。

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