食虫植物#3 私たちはプログラムされて生きている
恋をしてドキドキしたり、呼吸が荒くなる。
その反応はプログラミングによるものです。
プログラミングは、ある過程を自動化すること。
興奮して酸素がもっと必要になると、肺や心臓が自動的に酸素の供給量を増やそうとしてくれます。
恋心は(たぶん)自動的ではありませんが、身体反応は自動的です。
もしこのプログラムが無ければ、私たちは恋をするたびに倒れるかもしれません。
自然は、私たちの身の回りにプログラムが満ちていることを教えてくれます。
「食べる」プログラム
ハエトリグサは約550種類ある食虫植物の中で、閉じ込み式というタイプの罠を使います。
虫が「口」に入ると、センサーが反応して自動的に口が閉まる仕掛けです。
センサーは、「口」の中にある3本の毛です。
一本の毛に、一度触れるだけでは「口」を閉じません。
約20秒以内に、
【2本以上の毛を触る】 or 【1本を、2度刺激する】
という条件で「口」を閉じます。
つまり、タイマーと回数カウンターがついているってことです!
こうした時間制限とセンサーに触れた回数を数えるのには理由があります。
それは、誤作動防止プログラミングなんです!
ハエトリグサは、もし風などで草が「口」に入ったら、その草を数日かけて吐き出します。
雨や草などで口を閉じないよう、こうした条件があります。
短い時間でソソクサと動く虫だけを捕獲したいのです。
「消化する」プログラム
ハエトリグサのセンサーは、人間でいう「胃」とも繋がっています。
最近の研究では、20秒間に3回の刺激で消化酵素をつくり始め、5回目で消化活動を開始するということが分かったそうです。
つまり、センサーに引っ掛かった回数が、「口」と「胃」の処理のトリガーになっているのです!!
まさに虫だけを消化するように仕組まれたプログラミングです。
水中の掃除機ロボット
虫を捕まえる袋の中の水圧が、外よりも低いため小さな獲物を中に吸い込みます。
ロボットような植物は、タヌキモです。
根に見える茎が、水中に伸びています。
虫を捕まえる袋が常に水を排水するシステムになっており、中の圧力を外より低い状態(陰圧と言います)にしています。
基本的には、掃除機やストローで液体を吸うのと同じ原理です。
タヌキモの口には毛が付いていて、これに触れると陰圧になっている袋に虫が吸い込まれる仕掛けになっています。
そして、すぐ扉が閉じます。その速さは、わずか35分の1秒!
流石、水中の掃除機です!
吸い込んだ水はまた、袋の細胞から排水して陰圧を生みます。
食べる、恋する、産むことも…
私たちも生まれてすぐに、母乳を飲み、消化し、排せつをします。
食べるためには、そもそも「お腹がすいた」と感じる必要があります。
母乳を飲むためには、口の中に舌と唇で陰圧を作りだします。
消化するため、強い塩酸など(胃酸)を生み出し、保ちます。
ある程度で「お腹がいっぱいになった」と感じ、一方方向に排泄物を運搬します。
こうした過程は生まれてすぐに出来るものです。
DNAという記憶媒体に書かれたプログラムによって可能になっています。
こうしたプログラムのお陰で、食べたり、恋をしたり、子供を産んだり(一番すごいプログラムかも)します。
もっと言うと、食べて喜んだり、恋をして相手のことを考えたり、子供を産んで感動したりすることに集中できます。
私たちは思っている以上に、自分の意志や力だけで生きていません。
私たちが知性的な生き物であると認識できるのは、プログラムされた部分(無意識的な部分)と、プログラムされていない部分(意識的な部分)があるからです。
食虫植物について考えると、そうした人体の不思議やありがたみを感じられます。
サポートをして頂けると大変×2、助かります!お花の購入費にあてたり、もっと分かりやすいイラストが描けるように、日々研鑽するため、有り難く使わせて頂きます!