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回復のレシピ

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バターが溶けたいパン

自分がバターだったとして、どのパンに溶けたいだろうか。 世の中においしいパンはいろいろあれど、溶けたいパンランキング第一位は、マーヴェックさんです。 トースタの中でうっすら表面に汗をかき、バターナイフで擦られて「あああぁぁぁ」と声をあげながら、溶けてしまいたい。 それから人間の口に入るまでのわずかな間、液体になって、パンの深層部へ「ヤァ、オジャマシマスネ」とあいさつしながら潜りこんでいきたい。

浜松のうなぎが高いのは

うなぎを焼く。奥にしまってあるツボのふたをあけて、タレをじゃぼんとつけて、そっとひとぬり、ふたぬり。 お待ちどう、今日のうな重です。 愛情というのは、うなぎのたれに似ている。毎日毎日継ぎ足して、人様の家のものを盗んだり、借りたり、することはできない。 うまみだけじゃない。苦味も、えぐみも、辛味もある。塩味がやたらきついのは一子相伝ゆえ、ご愛嬌。 うなぎやは一生かけて、そのタレを毎日毎日継ぎ足して使っていく。 瓶の底が見えては一休みして継ぎ足し、瓶にヒビが入ればこれま

554文字の朝食

雑誌で目にする朝食はいつも理路整然としている。 たとえば洋食の場合。トーストにスクランブルエッグ、それからサラダにオレンジジュース。そんなバランスのとれた具合に、なんだか焦る。 実際の日々の生活は、なかなかそう竹を割ったようにはいかないからだ。 朝ごはんをつくらないと、と思いながら体が動かない日もある。今朝は、きのう握っておいた塩鮭のおむすびを一つ頬張って体を目覚めさせてから、朝食の準備をはじめた。 賞味期限が3日過ぎたマフィンをいいかげん食べなきゃ、とトースターを温

滋賀県朽木村の鯖寿司を「包装」「重さ」「会話の秒数」で食べ比べると、働き方のヒントが4つも見えた話。

奈良川上村の柿の葉寿司を「塩分」「重さ」「会話の秒数」で食べ比べてみるをきっかけに、もう1つの鯖街道を知りました。 福井県若狭湾でとれたサバを京都へ運ぶ72キロメートルの道です。 「いづう」「いづ重」「さか井」などの鯖寿司の有名店が並ぶ終着点の京都。 そこから鯖街道を遡ってみると、鯖寿司店が10軒ほど並ぶ村があります。 鯖街道のほぼ中間地点にある滋賀県高島市朽木(くつき)村です。 *平成の合併により、行政上は「朽木村」はなくなりましたが、本記事内では、朽木村と表記し

同じコーヒー豆を奈良川上村と東吉野村の水で淹れ比べると、村の個性が見える。

海なし県・奈良の吉野地方には、たくさんの清流がある。 それらの川は一見どれも同じだけれども、流れる水の色も、育つ川魚の味も、人の営みも、川ごとに異なる。 そんな一本一本の川の個性を、どうやったら人に伝えられるんだろう? そこで今回は、東吉野村と川上村を流れる2つの川を訪ねて川の水を汲み、コーヒーを淹れ、飲み比べて“官能評価”を行うことに。 加えて「pH」、「水の硬度(軟水か硬水か)」、「陰イオン分析(どんな成分が味に影響するか)」といった化学的な分析からも、川の個性を

一人暮らし社会人のための、チェーン店11店舗の低糖質メニューガイド。

「就職して体重が増えた」「スーツがきつくなってきた」。会社勤めをして、どうしても外食が増えがちな日々の中で、体調を整えていく助けになればと思い、チェーン店35ブランドにおける低糖質メニューをまとめました。 低糖質をテーマに選んだ理由は、周りに低糖質に取り組む人が増えていたからです。 またチェーン店を選んだ理由は、全国どこに住んでいても、役に立ちやすい(汎用性が高い)から。ちなみに、35ブランドの選定については、この本の力をお借りしました。 全国チェーンからご当地チェーン

「おでん」をあきらめて見つけた「えでん」のレシピ

うちのおでんは、しょぼい。 おいしいのだけれど、なんかしょぼい。 だから、何も言わずお客さんにふるまうと、おでんだと気づかれない。「今夜はおでんだよ」と家族を呼ぶ声も、どこか自信なさげだ。 おでんと聞いて、どんなイメージが浮かぶだろう。素材サイト写真ACで「おでん」と検索すると、こんな写真がヒットした。 そうそう、これがいわゆるおでんです。 でも、うちのおでんはいつもこんな感じ。 具の種類が少ない上に、1つ1つの具の数も少ない。 できるだけ写真ACに近づけるよう

ご飯にも、そうめんにも、アイツのアタマにもかけたい「ムカツイタトキニタベル粉」のレシピ

奈良産の香味野菜を奈良産の菜種油でコトコト煮出し、唐辛子に染み込ませてつくる「ムカツイタトキニタベル粉」。 体がなんだかだるくていらいらしてしまう。気分もじめじめして、つい“アイツ”にあたってしまう。そんな梅雨どきの体と心を、すっきりとリセットしてくれる。 ご飯にも、そうめんにも、カレーにも、アイツのアタマにも。何処にかけても良く合います。 ムカツイタトキニタベル粉のレシピ 油100cc/香味野菜(ねぎ1本、しょうが1かけ、花山椒5粒)/唐辛子300g ①ムカツく。

19円のごちそう、敗者復活戦の「もやし炒め」のレシピ

午後8時、全国のスーパーマーケットでは敗者復活戦が繰り広げられている。 養殖ブリの刺身、コーンコロッケ弁当、もめん豆腐。 どの選手もみんな、「半額」と書かれた赤と黄色のシールをでかでかと貼り、今か、今か、と手に取られるのをカウントダウンしてる。 でも、この敗者復活戦は全然フェアじゃない。 あっとうてきに不利な食材が一人、 もやしだ。 100g300円の牛すじ肉はいい。150円もお得になるのだから。「冷凍庫、まだ空いていたような・・・買っておいてもいいよね?」と、衝

「ジェノベーゼ?」「ババベーゼ!」のレシピ

和製パスタとしてなじみの深い「ジェノベーゼパスタ」。本場イタリアでは、バジルペーストをからめたパスタを「ペスト」というらしい。 でも、イタリアから約9700km離れた日本国奈良県には、そんなことお構いなしのご当地ジェノベーゼがある。今回は、地元のマダムやサラリーマンたちに親しまれている喫茶店でいただく「ババベーゼ」の話。 喫茶アーガイルは、10階建ての団地1階商店街にある。お隣りには、クリーニング店があるから、パスタソースをこぼしても駆けこめばなんとかなる。 アーガイル

奈良川上村の柿の葉寿司を「塩分」「重さ」「会話の秒数」で食べ比べてみる

奈良県に来たら、かならず食べたいものがある。 それは、柿の葉寿司。 海なし県の奈良において、三重県熊野市で水揚げされたサバに塩をふり、2日間かけて届けたことからはじまったローカルフードです。 知名度は比べものにならないけれど、「福岡へ行ったら、どの店でもいいから豚骨ラーメンを食べたい」とか「もうおなかいっぱいだけど、名古屋駅のホームできしめんをすすって帰ろ」という感覚に近いかも。 大手の柿の葉寿司は、JR・近鉄奈良駅周辺でも手に入ります。それはそれでおいしいのだけれど

3日後の自分を10秒チャージする「塩漬け豚」のレシピ

いそがしくなって、外食が増えてくると落ち着かなくなってくる。タンパク質をとるとよい、と聞いて、コンビニエンスストアでサラダチキンを購入するのだけれど。やたらとマイナス思考になり、仕事が滞る。結果として、効率も悪い。 料理は、栄養分以外の栄養をたくさん与えてくれるんじゃないか、と思う。それは、深夜に手に取るブロック肉のずしりとした重みであり、包丁を入れた時の質感であり、そこへ塩を擦り込む感触であり。 冷蔵庫にはいつも塩漬け肉をストックしている。 塩漬け肉には、500g前後

関西の地方都市で、自宅を開放しながら回復のレシピをつくっています。

関西の地方都市で、自宅を開放しています。インターフォンはありません。カギは共用しています。 そうして人が出入りする空間では、いろんな声が聞こえてきます。 「とりあえず東京から帰ってきたよ」 「結婚にむけて、料理の練習をしようかな」 「今日もがっこうに行けなかった」 「もうこのzoomミーティング5時間続いてるんだけど」 「寝不足続きで、あなたが2人見えます」 自宅を開放しておきながら、一人が好きなので、おもにキッチンにいます。みんなの会話を聞きながら、料理をしています。