スクリーンショット_2017-09-22_16.59.50

制作会社って何する会社なの?知っておいてほしい映像制作の話。

制作受託業務において、誰の満足を目指すかというジレンマが常にあります。

目指すべきは、クライアントの満足度なのか、最終的なユーザーの満足度なのか。

クライアントのオーダーの中でユーザーの満足度を高めるべし。というのが模範解答なのだろうけど、前提のオーダーの仕方が、ユーザーのニーズに合致しないケースもあるため、こじ開ける作業が必要になることもしばしば。

このあたりの着地点を探るバランス感覚が、プロデューサーの個性だし、センスなんだと思います。映像制作会社のプロデューサーは、代理店や広告主からのオーダーに応えながら、有効な映像を制作するための動きをします。


では、CMなどの映像制作業務全体の動きとしては、どういったフローとなっているのかを確認しておきます。

一般的には広告を作りたい企業・メーカー(広告主)が、広告代理店に発注し、広告代理店が制作プロダクションに発注するケースが多いです。

代理店や制作プロダクションは、平均的に30%〜40%のマージンをとっています。もちろんその%は案件により変動し、20%のこともあれば、60%の場合もあります。

たとえばメーカー→広告代理店→映像制作会社と経由し仕事がきたとしましょう。

メーカーが100万円の予算をつけていたとすると、代理店がまず40万円をとり、残り60万円。制作プロダクションがその30%(18万円)をとり、残り42万円が映像の制作費となります。

(実際には、代理店や制作プロダクションを複数社経由したり、マーケティングやプランニングを外注することも多く、支払い先が多くなれば、現場の制作費はより切迫します)

この42万円の中から、監督やカメラマン他技術スタッフ、出演者への人件費を支払い、ロケ場所や撮影機材、美術や衣装などの費用を支払います。


では、この中間マージンは何に対しての料金なのでしょうか。

大まかに言えば、

(1)企画営業費

(2)納品責任

(3)支払い代行費

(4)立て替え費

(5)+αの付加価値

に対しての費用だという理解で差し支えないはずです。


(1)企画営業費とは

クライアントとのやりとりをし、仕事を発生させることに対しての費用です。

(2)納品責任とは

仕事を受けたからには、納期までに所望されたかたちで納品する必要があります。たとえば外注スタッフが突然音信普通になり、納期に遅れるようなかたちになっても、制作プロダクションの責任となります。そのリスクを負うということに対しての費用も含まれています。


(3)支払い代行費とは

通常、映像制作では多くの支払い先が発生します。芸能プロダクション、スタッフ人件費、撮影にかかる経費(現場の弁当代など含む)、これらの支払いを全て制作プロダクションが代行します。フリーランスのスタッフに対しては、源泉徴収を行う必要があり、それに応じてマイナンバーを管理する必要もあります。そういった手間のかかる作業に対するコストも、手数料に含まれます。


(4)立て替え費とは

通常、撮影したものを編集し、納品してから実際にお金が支払われるのは2ヶ月以上先になります。しかし、現場でかかる費用や、フリーランスのスタッフに支払う人件費などは、一時的な立て替えによって支払います。つまり、制作受託をするには、予算を立て替えるだけの組織の体力が必要となってきます。
新しい小さなプロダクションが、気鋭のクリエイターを抱えていたとしても、数千万円の予算の映像をなかなか受けられないのはこのためです。例えば映像制作費として500万円を立て替えたものの、クライアントから支払いがなされなかった場合、制作プロダクションはその分丸々赤字を負うことになり、そのリスクは大変大きなものです。率直な話、弱小プロダクションは支払いが遅れただけで大きな打撃を受け、場合によってはそれが原因となり負債を負い倒産ということも十分考えうるのです。

(5)+αの付加価値とは

上記の項目を前提とした上、それ以外に、付加価値をどれだけ加えることができるかが、代理店や制作プロダクションのオリジナリティや価値に直結しています。


広告代理店の手数料が高いという声をよく聞きますが、これは代理店が持つ付加価値が大きいとされているからで、中でも主に広告枠に対しての料金と考えるのが一番良いと思います。たとえばテレビCMを作ったところで、それを流すためのには放送の枠が必要になり、通常はアプローチできません。電波に乗せて映像を発信するには、その枠を買う必要があり、広告代理店の1番の強みは、この広告枠を持っていることであり、現状の仕組みで放送の枠を代理店を通さずに買うことはほぼ不可能なので、広告主は広告代理店に仕事を頼むのが一般的です。


では、制作会社の提供できる付加価値は何か。技術力かもしれないし、ディレクターの個性かもしれないし、代理店的な機能を備えることかもしれないし。

そこを、みんな一生懸命やっているわけです。

ここまでを読んで頂いたらわかる通り、映像制作業務は非常に利益率の悪い仕事なので、安く早くで大量生産するか、一件あたりの利益率を上げることを目指します。

しかし結局のところ、機材が安価になり、扱える人がたくさんいる中で、映像なんて誰でも作れると考えられるようになったので、やっぱり付加価値の高い制作制作会社が、生き残る可能性が高いと言えます。


冒頭の話に戻ると、プロデューサーの仕事というのは、制作プロダクションの顔としての役割が大きく、結局クライアントと、映像を見るユーザーの満足度をどれだけ上げることができるかが重大なミッションとなります。
上記で説明した業界の事情のようなものを理解しつつ、与えられた予算の中で会社に売り上げを残し、関わった人間がハッピーになるために、各社プロデューサーは尽力するのです。
クライアントに言われた通りにするのも戦術としてはあり得るし、なんとかユーザーの満足度を高めるために交渉し、こじ開けていくということも大切なスキルです。
世の中にある様々な映像の多くはこういった経緯で制作されていくわですが、案件に応じてプロデューサーはどういった戦術をとるか判断し、最適なクリエイティブを提供し続けることと同時に、自社の付加価値をどれだけ生み出せるかを考えていくことが最も重要なことなのではないかと思います。


この度立ち上げた制作会社がどうやって利益を上げていくか。そのために、わたしたちが与えられる付加価値は何なのかを殊に考えることを辞めてはいけないのだろうと、思ってます。

われわれの価値は、4K黎明期から関わる技術力なのか、フットワーク軽く要望に応えるプロデューサーのホスピタリティなのか、映画も作るという体制なのか。


何を付加価値として打ち出していくか、非常に悩ましくもありますが、制作会社のブランディングであり生存戦略の根幹はそこにあるんです。というお話でした。


汐田 海平


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?