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高齢者の徘徊には目的がある⁉︎

夜間、一人で歩いている高齢者を見かけたことはありませんか?

「もしかして徘徊しているのでは・・・」と思ったことがある方も多いと思います。
「徘徊」と聞くとあてもなくフラフラと外を出歩くイメージがありますが、実は徘徊には目的があると言われています。
今回は「徘徊」について紹介をしたいと思います。

徘徊とは?

認知症の「周辺症状」と呼ばれる症状の一つとして「家から外に出て、あてもなくウロウロと歩き回る行動」の事です。

しかし前述したとおり、はたから見るとあてもなくウロウロしているように見えるかもしれませんが、何かしらの原因やきっかけがあり、本人にしかわからない目的がある行動だと言われています。
そのため、最近では徘徊の事を「ひとり歩き」という風に言い換えている自治体も増えてきています。

「認知症になると何もわからなくなる」、「認知症の方の外出は危ない」といった認知症の方への誤解や偏見につながる恐れがあるからです。
また言葉を言い換えるだけでなく、認知症の方を保護する訓練を積極的に行っている自治体もあります。
しかし一方では「ひとり歩き」では軽く感じてしまい、かえって危険にさらしてしまうといった意見や、「徘徊」という言葉を使う事で緊急性が高まるといった声も上がっており、全国的には一律「徘徊」という言葉を言い換えるといった流れにはなっていないようです。

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徘徊の原因

徘徊の原因としては「身体的な原因」「心理的な原因」「認知症状による原因」に分類する事ができます。

・身体的な原因
身体的な違和感が徘徊のきっかけになる事があります。
例えば「お腹が空いたから、台所へ行きたい」という理由で動き始めたとします。
しかし途中で、いく場所を忘れてしまったり、食べるという行動を忘れてしまい、お腹がすいたまま徘徊してしまうケースがあります。 
他にも「排泄に行きたい」と思ってトイレに行こうとする時に、トイレの場所がわからなくなったり、排泄するといった行動を忘れてしまいウロウロとしてしまうケースもあります。

・心理的な原因
心理的なストレスによって徘徊してしまう事があります。
例えば夕方から夜になるとそわそわと落ち着かなくなり、外に出ようとされることがあります。この場合、「不安」や「焦燥感」などの心理的要因が考えられます。
以前は夕食の支度をしていたり、買い物に行くことを経験していると、「何かをしなければならない」といった衝動に駆られて、外に出ていこうとされます。
また、外出をしていても、夕方になると「帰らないと主人に怒られる」といった理由があると思われます。
また、過去の自分の習慣を再現しようとする「回帰型」と呼ばれるものがあります。
これは現在の自分が受け入れられない事から、若くて活躍していた自分に戻ってしまう状態です。そのため、定年退職しているのに会社に行こうとしたり、子供を迎えに行こうと外へ出て行ったりといった行動が現れます。
 
・認知症状による原因
認知症には中核症状(誰にでも起こる症状)と周辺症状(環境や性格によって起こる症状)があります。
中核症状には「記憶障害」「見当識障害」があり、思考や判断力の障害が起こり、徘徊してしまう事があります。
記憶障害では、なぜここにいるのかを忘れてしまったり、いつも通っている道順を忘れてしまう事があり、徘徊してしまいます。
見当識障害では、自分のいる場所や、時間がわからなくなり、混乱した結果、徘徊してしまうといったケースもみられます。

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徘徊の危険性

認知症の方の徘徊は、事故やケガなどさまざまな危険が伴います。

例えば、
・行方不明になってしまう
・転倒や怪我
・夏場におこる熱中症や脱水症状
・冬場におこる低体温症状や風邪症状
などなど。

徘徊は屋外で起こるだけでなく、家の中でも転倒や熱中症は起こり得ることなので、常に注意が必要です。
止めようとしたり、抑えようとすればするほど、ご本人は出かけようとしてしまうため、転倒するリスクや時には手を振り切って物にぶつかる、暴力をふるってしまうといった怪我も負ってしまうことがあります。
歩き続ける事で身体が衰弱し、生命の危機に陥る事も。

また、靴を履かずに徘徊してしまい、帰ってきたら足の裏から出血をしていたり、自動販売機で飲み物が買えず、叩き壊して怪我をするなど、行動に検討がつかない事もあります。
警察に保護されるといったケースも少なくありません。

また、夜間に徘徊することが増えれば、介護者の心身に大きな負担がかかり、介護者の体調にも影響を及ぼすという意味でも危険性があります。

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徘徊する方への適切な対応

認知症高齢者本人に降りかかるリスクと、介護者の負担を小さくするには、徘徊への理解や適切な対応が重要です。一部ではありますが紹介します。

①怒らない
怒られた内容は理解できなくても、その時に感じた恐怖や嫌な気持ちは残るといわれています。それにより「ここにいると嫌な思いをする」「ここは気持ち良く過ごせる場所ではない」という不愉快な思いだけが蓄積され、さらに徘徊が続いたり、妄想などほかの周辺症状が現れてしまう可能性もあります。

②理由や目的を聞いてみる
なぜ徘徊をするのか、その理由を聞き、目的を探りましょう。
周囲の人や家族にはわからなくても、本人には目的や理由があります。明確な答えが返ってくるとは限りませんが、寄り添う気持ちが通じれば、心も安らかな気持ちを覚え、症状が改善される可能性も大いにあります。

③自由に歩いてもらう
外へ出ようとすると慌てて止めようとしてしまいますが、そのまま一緒に歩く事も有効です。歩きたいように歩く事で気持ちが落ちくこともあるからです。その中で、目的を見いだせるヒントがあったり、必ず通る道や立ち寄る場所などから情報を得る事ができます。また、一緒に歩く事で事故や怪我のリスクも減らす事ができ、うまく誘導すれば、軽い散歩程度で帰宅できる場合があります。

④他のことに気をそらす
よく家でくつろいでいる時に「家に帰る」と言って外に出ようとする時があります。そう言った場合に、「帰る前にトイレに行っておきましょう」「上着を取りに行きましょう」といった声をかけてみましょう。
認知症の方は良くも悪くも、物事をすぐに忘れてしまいます。どこかへ行こうとしていたこと自体を忘れてしまう事も多いので、色んな方法で、気をそらす事も有効です。

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まとめ

徘徊をしてしまう人への対応で大切なのは、徘徊する本人の気持ちを汲み取り、介護者が全て一人で背負おうとしないことです。

家族や福祉サービス、近所の人の力も積極的に借りることが重要です。
それでも行方不明になってしまう場合は、手分けして探したい気持ちもあると思いますが、速やかに警察の助けを借りましょう。
見つかる時間が長くなるほど、事故や怪我のリスクが高くなってしまいます。
最近ではGPS機能の付いた靴やアクセサリーなども販売されています。また、普段身に着けているものに名前や連絡先などを書いておくことも非常に有効ですので、利用をお勧めします。

各地域の自治体では、徘徊者に対して見守りネットワークサービスというものがあります。事前に登録しておき、徘徊発生時に連絡することで、発見の協力をしてもらうことができます。
お住いの地域の該当サービスについては、自治体や警察署に問い合わせてみましょう。

徘徊は、介護者を疲労困憊させます。徘徊が始まってしまった時に間違った接し方をすると、症状を悪化させる可能性があるため、徘徊に対して正しい理解や接し方を知っておくことで、本人に安心感を与え、症状の悪化も防ぐ事ができるのではないでしょうか。

東住吉介護センターでは随時、介護相談を承っております。些細な事でもお気軽にご相談下さい。

フッターB


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