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レビー小体病の本を読みました

以前、認知症の妄想を利用してケアしたケースについてnoteを書きました。本noteはその続編というよりも、
もっと深く認知症を知ると、それまでとは違う考えを持ちました、
という内容になります。

妄想がある認知症に、レビー小体型認知症があります。認知症介護の現場にいて、レビー小体型認知症は進行が早いと感じる事がありました。また、妄想が強い認知症なのに、カルテを見るとレビー小体型認知症ではなくて、アルツハイマー型認知症である方がいらっしゃいました。
どちらの認知症にしても、妄想を否定しない関わりを心掛けていました。

私はX(旧ツイッター)をやっています。樋口直美さんという、レビー小体型認知症の当事者の方とやりとりした事があります。樋口直美さんは、認知症当事者ですが、病気の当事者としての本を何冊も出版されている方です。認知症で本の出版!?著書を読んだり、樋口さんのSNSを読んだりすると、そのクリアさに驚きを覚えます。認知症って?
見ず知らずの私と交流してくださるなんて、SNSって凄いですよね。


「私の脳で起こったこと」(樋口直美著、ブックマン社 / ちくま文庫)を何気なく手に取った時から、私の中でレビー小体型認知症のイメージは大きく変わりました。
認知症当事者である樋口さんの詳細な日記。
こんなエビデンスが本になっているなんて凄いな、と思いました。機会があれば同僚にも勧めたい凄い本だと思います。
レビー小体型認知症の幻視について、リアルに描写されています。そして、その診断に至るまでの紆余曲折、仕事や生活での戸惑い、家族とのやりとりなどが日記に記されています。

9月19日、動く虫の幻視を見た。その瞬間、悪夢が現実になったと直感した。(中略)幻視について調べ、レビー小体型認知症を強く疑うきっかけになった。

「私の脳で起こったこと」(樋口直美著、ブックマン社 / ちくま文庫)

仕事中、ふと津波が来ることを想像した。
私は幸せな気持ちで波に向かって歩いていくだろうと思った。
恐怖だった津波が、今は、救済に代わっている。
私は、死にたいのか。私は、死にたいのか。仕事をしながら泣きそうになった。
私は、死にたいのだ。決まっている。死ぬ方がよっぽど楽な道だ。
自らの尊厳を保てる。家族に負担をかけない。

「私の脳で起こったこと」(樋口直美著、ブックマン社 / ちくま文庫)

私の職場の介護施設には、レビー小体型認知症の方がいらっしゃいますし、この方はレビー小体型認知症みたいだけど、アルツハイマー型認知症の診断なんだ、という方もいらっしゃいます。また、レビー小体型認知症と同じ物質が蓄積すると言われている、パーキンソン病の方もいらっしゃいます。そういった事から、レビー小体型認知症は、分かりにくい謎の多い病気だと思っていました。
「レビー小体型認知症とは何か」(樋口直美・内門大丈著、ちくま書房)を読むと、謎が多いと思っていたレビー小体型認知症について、すっきりと腑に落ちた気がしました。そして、レビー小体が蓄積する事は、特別な事ではなく、誰にでも起こり得ることであり、正しい知識と診断が大切だと気づきました。
アルツハイマー型認知症と両方の認知症になる方も多いという事。
うつ病と誤診されて薬が合わずに悩む方が多いという事。
認知機能低下があまりない方もいるという事。
様々な事が納得できました。

レビー小体病(レビー小体型認知症、パーキンソン病、他)は、知識さえあれば、素人にも早期発見ができますし、早くから適切な治療とケアを受ければ、長く良い状態を保つことができます。短命になることもありません。

「レビー小体型認知症とは何か」(樋口直美・内門大丈著、ちくま書房)

レビー小体型認知症は、薬で大きく症状が改善する場合があるそうです。しかしながら、どの薬が劇的に効くのかは、個人差も大きい様です。どの病気にも言えることかも知れませんが、希望を持って、伴走してくれるような医師と巡り合うことも大切だと感じました。

内門 レビー小体は、脳だけではなく全身の神経や臓器にたまりますからね。そのたまり具合によって症状も違うだろうと思います。
脳の下の方にある脳幹という部分を中心にレビー小体がたまるのが、パーキンソン病です。大脳皮質といって脳の表面部分全体にまで広がると認知症が出てきて、レビー小体型認知症になります。この二つの病気は、連続性があって、診断基準や症状もほぼ共通しています。だから大きくレビー小体病として捉えて、経過を診ていった方がいいですね。

「レビー小体型認知症とは何か」(樋口直美・内門大丈著、ちくま書房)

私もいずれ高齢者となりレビー小体がたまるのだと思います。レビー小体が体内にある事は特別な事ではない、という現実を知ることで、当事者であるご利用者へ接する時の気持ちが変化したり、自分自身の生活も、より健康的なものに変わるような気がします。

私は、どうして何年も、バカみたいに悩んでいたんだろう。私は、本当にバカだ。
子供達は、とっくに私の想像を越えている。人を支える存在に成長している。
人は、いや、私は、弱く、頼りない。人に支えてもらわなければ、生きてはいけない。どうしてそんなあきらかな事実すら、私は、認めようとしなかったのか。
私は、もう何があろうとも生きていけると思う。
大丈夫。絶対に進行はさせない。
今の私は、最強。

「私の脳で起こったこと」(樋口直美著、ブックマン社 / ちくま文庫)

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