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認知症BPSD妄想を利用したケース

認知症ケアに関わるご家族にとって、BPSD(認知症の周辺症状)は本当に大変な事だと思います。仕事柄、認知症の方に関わる事が多く、トライ&エラーで色々と試せる恵まれた環境にいるので、そこで得た事例をnoteで紹介してみたいと思います。

帰宅欲求の強いご利用者様。不機嫌な表情でデイサービス内をウロウロと歩かれたり、ロックで開かない玄関ドアをガタガタされます。「こんな所に来たくなかった」という不機嫌な表情。無理に関わろうとすると振り解く様な動きが見られます。スタッフに近付いて欲しくない様子も見られました。
短い会話なら可能で、お話しをよく聞くと、家に残して来た家族、中でも未成年の子供達を心配している様子でした。実際には子供達は大人になっています。会話の中に家族以外の親戚が現れることもありました。部屋の片隅に両手を合わせてかしわ手を叩く様子がありました。

妄想も色々ですが、この方の場合は否定せず、全肯定した方が良いと考えました。(物取られ妄想など、肯定すると大変な事態になる場合もあると思いますが、この場合はそれに当てはまりません)

距離を取って歩きながら、「それは心配ですね」「こんな慣れない所に来ていただいてすいません」「手伝っていただきありがとうございます」「家は遠いのでバスの時間まで待ちましょう」などなど…

こんな感じの事を延々と繰り返して話します。何を言っているか分からない時は、おうむ返しが無難です。よく聞き取れないながらも「〇〇なんですね」と言うと、当たっていれば頷いて表情が和らぐし、違っていれば違うという反応が返って来ます。

丁寧な関わりを続けていると、デイサービスを自分の居場所だと思っていただけるのか、帰宅欲求や介護拒否などが和らいできます。認知症の方は私の顔や名前を覚えていただけない方が多いですが。「この人は信頼できる」とか、「この場所は居ても良いのだ」の様な、非言語的な印象の記憶は、とてもしっかりと有るのだと感じます。

普段の生活では否定されたり、矛盾していたりする妄想も、ご本人にとっては現実に感じる事なので。妄想を否定しない関わりは、ご利用者様の信頼を得る行為なのだと考えています。

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