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「その人らしさ」より「ありのまま」 【ケアっていいよね】

ザ・ハーモニーのケア事業部責任者のコースケです。
ある日のウチのエリアマネジャーとの会話をご紹介します。

介護業界でよく言われる「その人らしさ」

 介護の業界では「その人らしい生活をサポートする」ことがよいとされていますよね。

 これは介護保険法制定後に出てきた概念であり、それまでの介護は身体的なケアや日常生活のサポートに重点が置かれることが一般的で、それは当事者の主体性が置いてけぼりになってしまうことが多く、施設や専門家がどんなケアを提供するかを決定することが往々にしてありました。

 その反省から、介護保険法では「措置から契約へ」と言われるように、自己決定・自己選択など高齢者自身の意思や希望、権利を重要視するようになりました。

 たとえ加齢に伴い以前より出来ないことが増えても、たとえ認知症になったとしても、できるかぎり自分のことは自分で決定し、自分の希望に沿った人生を生きていく、それをサポートする介護が「その人らしさ」を支援するよい介護というわけです。

 素晴らしい考え方ですよね。
 私自身も全くもって共感しますし、そういうケアを目指したいなと思います。

 そんな風に日々思っていたのですが、ある日ウチのエリアマネジャーのノブ君と「その人らしさ」を支える介護について話していたところ、ノブ君は「ん~。僕はちょっと違う意見なんですよね。」と言いました。


「僕は『その人らしさ』より『ありのまま』を大切にしたいんですよね。」



こいつです。

 「その人らしさ」より「ありのまま」?
 どゆこと??

「ありのまま」を受け入れる介護

 ノブ君は言いました。

 「その人らしさ」とはどういうことでしょうか?全員一律に穏やかであることが「その人らしさ」でしょうか?
 その「その人らしさ」を介護者側が考えてはいないでしょうか?
 知らず知らずのうちに介護者が考える「その人らしさ」を押し付けていないでしょうか?

 例えば、夜なかなか眠られず施設内を歩き回っているゲスト様(※ザ・ハーモニーでは利用者様のことを『ゲスト様』とお呼びします)がいらっしゃったとしたら、その状態をすぐ「問題」として認識していないでしょうか?「夜は良眠すべき」「歩き回るのは『徘徊』という症状」「静かに座っているのが良い状態」と決めつけていないでしょうか?
 中々眠られないことにイライラしたりしてないでしょうか?

 そのゲスト様は元々就寝されるのが遅いライフスタイルなのかもしれません。徘徊ではなくただの散歩なのかもしれません。体を動かすことが好きなのかもしれません。そういった生活者としてのゲスト様を見る視点を忘れてないでしょうか?

 「認知症の人」として見るのではなく、認知症もその人の一部であるという認識で全部ひっくるめてゲスト様のことを見ることが、僕は介護においてとても大事だと思うんです。
 それが僕の思う「ありのまま」を大切にするということ。

 「その人らしさ」とは一見素晴らしい言葉ですけど"介護者側が考える「その人らしさ」を無意識に押し付けてしまう”という落とし穴もあります。この落とし穴に落ちないためには、「その人らしさ」からケアをスタートさせるのではなく、まずその人の「ありのまま」を受け入れるところからケアをスタートさせることが大切だと思うんです。

ほっほ~。なるほどねぇ~。めちゃくちゃええこと言いおるわぁ、この子。

「その人らしさ」と「ありのまま」

「ありのまま」が結局「その人らしさ」に繋がる

 つまり、介護者側が決めた「その人らしさ」の落とし穴にハマった状態になってしまうと、たとえば怒りっぽいゲスト様がいらっしゃったとして、その怒りっぽい状態は介護者側からみると「その人らしくない」となります。
 そしてそれは「よくない」状態であり、たとえば「〇〇さん今日は調子が悪いね」とか言われたりします。

 そうではなくて、その状態を「良いor悪い」ではなくて、一度ゲスト様の立場に立ってみて「何故、怒りっぽくなっているのか」について思いを馳せてみましょう、ということです。
 その人の立場に立って物事を見てみたら「そりゃあ、怒って当然だ」と思えることが見つかったりします。

 例えば認知症の症状で「今、どこにいるのか」がわからない状態になって、不安だから「帰りたい」と訴えているのに、従業員らしい人間は「帰れません」の一点張りで聞く耳を持ってくれない、とか。

 想像してみると、そうですよね。
 周りには知らない人ばかり。この建物の従業員らしい人はいて、たしかこの人達にここに連れて来られたけど、ここがどこかもわからない。家族はこのことを知っているのか?家族は今何をしているのか?この施設はお金がかかるんじゃないのか?いつ家に帰れるのか?
 このような状態だと不安になって当然ですよね。それに加えて従業員が聴く耳を持ってくれないなら怒るのもこれまた当然だと思います。

 そういうときにその「ありのまま」の不安を理解し、受け止めることが出来ると、自然とゲスト様に寄り添った対応が出来ます。
 それは声掛けする言葉の内容もそうですし、話し方のスピードや落ち着いた口調、ゲスト様の目線の高さに自分の目線の高さを合わせること、穏やかな笑顔、体の向きや姿勢、うなづき、などなどノンバーバル(非言語)なところにも表れます。
 少し話が脱線しますが、人間のコミュニケーションの90%以上は言語的(バーバル)なものではなく、非言語(ノンバーバル)で構成されていると言われており、このノンバーバルコミュニケーションは人間のコミュニケーションにとって、そしてもちろん認知症ケアにとっても非常に大切な要素となります。

「ありのまま」から、安心感を創る

 手前味噌になってしまいますが、以前お付き合いのあるケアマネジャーさんから「ザ・ハーモニーさんは『安心感』を創り出すのが上手なんでしょうね。」というありがたい言葉をいただいたことがあります。
 そのケアマネジャーさんはウチの複数のゲスト様のビフォー・アフターをご存知の方で、他の施設や病院ではいつも険しい顔をされていた人がウチでは笑顔でレクリエーションに参加されていて驚いたと言われてました。

 もしこのありがたい言葉どおりにウチが安心感を創り出せているとしたら、それは「ありのまま」からケアをスタートさせているからなのかもしれません。
 そしていつも険しい顔をしていた人が笑顔でレクに参加される姿について、どちらが「その人らしい」かというと、やっぱり「険しい顔」じゃなくて「笑顔」だと思います。
 ということは、「ありのまま」からケアをスタートさせることって、結局は「その人らしさ」に繋がるんじゃないかなと思うのです。
 この「ありのまま」から「その人らしさ」を支える介護に繋がることを目指して、ザ・ハーモニーは日々ケアを行っていきます!

 ま、まだまだですけどね🤭
 これからも精進します😁

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