映画『ゴティックメード』は『ファイブスター物語』を知っていると100倍面白くなる。
先日、永野護デザイン展に行ったついでに映画『ゴティックメード』を観て来ました。
いまから十数年前、初めて上映されたときにも観たのだけれど、そのときはこの作品が『ファイブスター物語』と絡んだストーリーだということを知らなかったので、『ファイブスター物語』にかかわる細部を見落としていたに違いなく、いつかもういちど観たいと思っていたのです。
その願いがようやく叶い、感無量ですね。
『ゴティックメード』の舞台はいずことも知れぬ時代、どことも知れぬ宇宙の開拓惑星カーマイン・プラネット。
まあ、じつは『ファイブスター物語』でいう星団暦451年のボォスなのですが、その事実が明かされるのは物語の最後の最後。
それまではこの、人類が入植し始めてからまだそれほど時間が経っていないなぞめいた星を背景に、過去数千年の記憶を継承する詩女(うため)と呼ばれる少女ベリンと、彼女を護衛しにやってきた大国の皇子トリハロンの出会いと対立、そして和解とほのかな恋心?を追いかけていきます。
ある種のロードムービーであり、〈ゴティックメード・カイゼリン〉というそれはもう美しいロボットが活躍するロボットアニメでもあるわけですが、おそらく『ファイブスター物語』をまったく知らない人にとっては、「まあ、こんなものか」と感じる程度の作品であるかもしれません。
というのも、この映画、もともと永野護が個人で作る予定の(!)完全なプライベートフィルムだったのですね。
なんでも、かの新海誠が『ほしのこえ』を個人製作したという話を聴いて、「なんだ、ひとりで作れるのか。じゃあおれもやろ」と思いついたらしい。
いや、そんなノリと勢いでアニメ一本作ろうなんて考えるか普通?と思ってしまいますが、あらゆる意味で普通じゃない人のことなのでしかたない、そういうものだと受け入れるしかありません。
まあ、最終的にはやはり個人製作というわけにはいかず(あたりまえだ)、200人くらいの人がたずさわることになったそうですが、それでも元々は小規模の企画で、上映館数もわずか数館程度でした。
そしてその頃はあくまで連載がストップした『ファイブスター物語』とは無関係の作品という体裁だったのです。最初から『ファイブスター物語』の名前を冠して作ればもっと大きく展開できただろうにねえ。ところん人をびっくりさせることしか考えていないんですね。
しかし、もちろん、じっさいには『ゴティックメード』のストーリーは『ファイブスター物語』とがっつり関わっています。というか、ほぼほぼ本編の一部です。
「詩女」とは『ファイブスター物語』でいう「アトールの巫女」のことであり、トリハロン皇子は『ファイブスター物語』における某大帝国の初代皇帝だったのです!
な、なんだってー。しかも、この真相が明かされるのはエンディングのキャラクター紹介になってから。とことん人を食っています。
いや、ほんと、最後の最後になって「みんな、きみたちの知っている人のことだよ」みたいに紹介するのやめてほしいんですけれど。びっくりするじゃないか。
で、今回、『ファイブスター物語』の一部であるということを知った上で見たら、やはり発見がありました。
あ、ベリン、うどん食べているじゃん!とか、トリハロン、ちゃんと指輪つけているじゃん!みたいな。
これらはいずれも『ファイブスター物語』本編にかかわっている内容なのですが、まあ、まさかこのとき彼女が旅先でうどんを食べたりしたことがはるか数千年後の大国同士の和平につながるとは、だれも思わないよなあ。よくこんなこと考えるわ、感心する。
そういうわけで、『ゴティックメード』は『ファイブスター物語』をとことん読み込んでから見ると面白さが何十倍にもなるという作品なのでした。
ちょうど『ファイブスター物語』連載本編がその某帝国のエピソードに入っているので、そこと併せて楽しむと面白さは100倍になります。
まあ、永野護の例のこだわりが発動したためいまに至るも円盤になっていないという作品なのでいまから観ることは大変だとは思いますが、もし観る機会があったらぜひ『ファイブスター物語』を、少なくとも第13巻あたりまでは予習してから観覧されることをオススメします。
いや、面白いですよ。まさかあれがあれでそれがそれでとは、みたいなところが随所にある。星団の歴史が、また一ページ。
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