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第65話 怪談『皆を連れてきて』(バス・お題 『悲しみ』)

会社の同僚の田中さんは、小さい時に良くおばあちゃんの家に行く機会が多かったそうです。
自分の家にいる時は、テレビを見たり、友達と遊んでいたそうですが、おばあちゃんの田舎にいくと、テレビなんかは無く、いつも遊んでる友達もいないという事から嫌だったそうなんですよね。 おばあちゃんは1人暮らしをして、お父さんは中々、仕事で忙しく来れなかったそうなんですが、お母さんと田中さん2人でおばあちゃんの所に行ってたそうで。
でもいつの頃か、おばあちゃんの所に行くと、同い年くらいの友達ができたそうで。
とても気があったらしく、一緒に虫取りをしたり山の中で遊んだりと1人の時だと、つまらなかった 事が途端に楽しくなって
「今度、おばあちゃんのところには、いついくの?!」 と親に聞いてみたりして。
そして、その夏もおばあちゃんの所に行く事になり田中さんとても嬉しかったそうなんですね。
おばあちゃんの所に着くと 「遊んでくるねー」
「暗くなる前には帰るのよー」 とすぐにその子の所に行ったそうなんでね。 そしてその日も夕方まで遊んで帰ろうとすると、 「今日でねーお別れなんよー」 とその子が少し寂しそうに言うんですね。 
「えっ!」
と田中さん悲しくなって
「寂しいなー」
というとその子は少し寂しそうに、ニコニコとしていたそうなんですね。
そうかぁ、もう会えないのか〜、こんなに仲良くなったのにと考えれば考える程悲しくなって、田中さん泣いたそうなんです。
するとその子が
「今日ね、田中くんの、お家の人にも会いたいなー」
っていいだしたらしいんですよ。
「この後、家でご飯しようよ。おばあちゃんとお母さんと今おばあちゃんちに居るんだよね? 沢山の美味しいご飯用意しておくから、このことは内緒で連れてきてね」
と言われて田中さん、最後で寂しいけど、そうだ皆でその子の所に行って楽しもうと。
すぐに、おばあちゃんの所に戻ると
母とおばあちゃんに 「ちょっとね、この後少し一緒に来てもらいたいの、山でね、凄い良いものみつけて」
と誘うと母もおばあちゃんも少し困ってましたが、楽しそうな田中さんの様子を見て、ついて行くことに 。
そしてその子の教えられた家の前まで来ると、
おばあちゃんが 「なしてこんな、、、」と言いかけた時に、少し大きな地震がきたそうです。
田中さんと3人はその場で肩を取り合い蹲ったそうです。 地震がおさまり、とりあえずは家が心配になりおばあちゃんの家に帰ったそうなんですが、地震
で山の土砂崩れがおきて、おばあちゃんの家が半壊していたそうなんです。
色々とその後は、大変だったそうですが、 田中さんのおかげで命が助かったとお母さんもおばあちゃんもとても喜んだそうです。
その後、友達の子が気になり家に行ってみると、同じく山の近くだった事もあり、その子の家も土 砂崩れで潰れていたそうで、忙しいでおばあちゃんの所に戻り事情を説明すると
「なんとね、そんな事が」 
「あの子大丈夫だったかな」
「あんねー、あそこね、もう長い事、空き家なんよ だーれも住んでおらんとよ」
「えっ!?」 と驚いた田中さんでした。
もう何年も空き家で誰も住んでおらず家もボロボロだったらしいんです。 
しかし田中さんには、確かにその子と遊んだ記憶、そしてその子の家を見たときにボロボロには 見えなかった事、その子と遊んだ思い出は確かなものだったと話してくれました。

その後、空き家に行ってみたそうですが土砂で潰れたままになっており、もちろんその子が居るはずもなく、田中さん、
「その子にもう会えないのは、とても悲しく寂しかったけど、母と祖母と自分をきっと救ってくれたん だなー。あれは、もしかしたら座敷わらしだったのかも」 と話してくれました。


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