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第55話 怪談『罪状』(バス・お題『罪』)


その日、恵子はスマホが起動しない事に朝気づいた。
「参ったな、今日の休みの間に修理にいくか」
以前入っていた広告を取っておいて良かったと恵子は思った。
隣の駅に出来たスマホのショップに持って行けば良かったからだ。
隣の駅に降りて、ふと恵子は気づいた
「そういえば隣町、来たの初めてだ」
近い場所にあり、何も無い所だと思っていた為、来ることもなかった。
恐らくスマホが壊れなければ来ることもなかった町だった。
駅を出て目的地までは少し距離がある為、歩いて向かってる途中
「すみません」
恵子「はい?」
「道に迷いまして、ここに行きたいのですが」
恵子「すみません、私も初めて来たんで」
「そうですか、、、、、、」
恵子「はい」
「、、、、っていいですか?」
恵子「え?」
「あなたには、生きてきた罪状があるので祈っていいですか?」
恵子「いや、困ります、、、」
恵子は走って逃げた
その男は見えなくなるまで恵子に手を振っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、急ごう」
「もう少しかな、やっぱスマホがないと不便だ」
少し迷ったのか気付くと住宅街に来ていた。 その住宅街の1軒の家から20代後半くらいの女性が出てきた。
その女性が何故かこちらを見ていた。
そして
「あなた、こちらから来たわよね?何か落ちてなかった?大切な物なの」
「いえ、何も」
「嘘よ、嘘、隠したのね」
「何も無かったです」
「私の彼氏なの、返して」
「えっ?」
「返してよ、大事な彼氏なの、あなたには分からないでしょう?私がどれ程大事にしてたか、どれだけ尽くしたか?ねえ、返してよ、かえせ!」
恵子はまた走った。
「はぁ、はぁ、何なのこの街」
走った先には公園があった。
公園を入るとホームレスなのか、ベンチで破れた服を着た男が寝ていた。
「あぁ、今日もダメだった。このままじゃ明日も」
そんな事を言いながら、その男がこちらを見ている。
「そうかぁ全部こいつのせいか、こいつさえいなければ、あぁ残念だ、身体が、動かない、動けばすぐに行くのに」
「、、、、、」
「もっとこっちに来い、来いって、来てくれ、もうダメだ、明日には俺の家族もいない、帰りたいなー、そうかやっぱり、こいつさえいなければ」
恵子は目を合わさないようにまた走ってその公園を出た。
その日恵子はスマホのショップを見つけることは出来なかった。


動画はこちら。


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