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本当の意味で自信を持つには〝根拠〟が必要だった話

「500円でミニキャラを描きます」という企画をやりました。その名の通りですが、依頼者さんをモデルに、2〜3頭身くらいのミニキャライラスト1枚を、500円で描くという企画です。

ぼくはこの企画で地獄を味わうことになりました。

ぼくは元々自分に全く自信が持てないタイプです。漫画やイラストのお仕事を請け負う前は、自分のスキルに自信なんて持てませんでした。しかし、仕事を請け負うとなったらそんなことは言ってられませんでした。(いい意味で)自分を騙し、〝根拠のない自信〟を持ちながらガムシャラに活動していました。

企画を始めたのは3年ほど前。漫画やイラストのお仕事を請け負うようになって少し経った頃でした。

当時は自分に自信があると思っていました(割と簡単に騙されてくれました)。しかし今思い返すと、心の奥底ではまだ自分に自信が持てていなかったのだと思います。イラスト1枚500円という価格設定がそのことを裏付けています。

絵を描くのだって簡単ではありません。1枚5分〜10分で描けるのなら500円という金額設定でもいいかもしれませんが、人様に提供する商品をそう簡単に描けるものではありません。当時のぼくで、ミニキャラを1枚描くのに最低1時間はかかっていました。なのでこの金額設定がいかに安価かということは理解していました。(ちなみに、比較的安価で仕事が回っているココナラでは、イラスト1枚の相場はだいたい3000円くらいです)


しかし当時は仕事を始めてから間もないころ。スキルアップをするために少しでも数をこなしたかったのです。500円という安価な設定にしたのは、金額を高くすると依頼が全く来ないのではないかと思ったためです。また矛盾しますが、そんなに依頼がたくさん来るとも思っていませんでした。500円という安価な価格設定でも、10枚程度なら多少割りに合わなくても描き切れるだろうと思ったんです。

ところがいざ募集をしてみると、500円という金額設定が効いたのか思いのほか依頼が集まりました。結果的に70枚程度のミニキャライラストを500円で描くことになったんです。ぼくは地獄を見ました。

当時、ぼくが1枚のミニキャラにかけていた時間は最低1時間程度。長いときで3時間程度かかっていました。1枚に1時間〜3時間かかるものを70枚もこなすことになったので大変です。依頼がたくさん集まって嬉しかったのですが、反面、その数を見ると気が重たくなりました。1日1枚ずつくらいのペースで仕上げていき、3ヶ月ほどで全員にミニキャラをお渡しすることができました。(全て描き終えたときの開放感はとても爽快でした)


結局のところ、自分に自信がなかったのです。


スキルアップのために少しでも数をこなしたかったとはいえ、金額を高くすると依頼が来ないと思ったということは、「こんな自分に定価で仕事を依頼してくる人なんかいないだろう」と思ったことの裏返しです。また、そんなに依頼がたくさん来るとも思っていなかったということも、「こんな自分に仕事を依頼してくる人なんているわけがない」と思ったことの裏返しです。


根拠のない自信は、結局のところ〝根拠のない自信〟でしかありませんでした。


あの企画を機に、自分のスキルを安価で売ることは二度としないと誓いました。以来、相場以下の金額でお仕事を受けたことはほとんどありません(何度かはありましたw)。しかし、相場の金額でお仕事を請け負っても、どこか申し訳なく思いながら仕事をこなしていました。「こんな自分が、この程度の仕事でこんなにお金をいただいていいのだろうか」なんてことを、ずいぶんと長いこと思っていた氣がします。受け取る金額と自分の自信が釣り合っていなかったのです。


先日、半年以上ぶりに仕事を請け負いました。イラスト1枚30,000円で、お仕事をさせていただいたのですが、不思議と申し訳ない氣持ちはありませんでした。1枚500円で受けていた頃を思うと、ずいぶんと金額が上がっているのに1ミリも「こんな自分が〜」とは思いませんでした。


自信がついたのです。


昨年1年間ぼくは、『#毎日女子』という企画を行いました。 #毎日女子 とは、1年間、毎日女子のイラストを投稿するという企画です。この企画でぼくは1月1日から12月31日までの366日間、1日も欠かすことなくTwitterに女子のイラストを投稿し続けました。

1年間で366枚のイラストを描いたのです。これがぼくの自信の根拠になりました。

量をこなしてきたことが自信の裏付けになったのです。毎日女子を投稿していくうちに、心境に変化が現れました。「これだけ描いてきたから、これだけいただくのは当然でしょ」と、いつからか思えるようになっていました。だから今回の1枚30,000円というお仕事も、特に自分に負い目を感じることなく堂々と金額を提示し、堂々とこなすことができました。


本当の意味で自信を得るには、根拠が必要だなと思ったきっかけの出来事です。


根拠のない自信は、行動を起こすきっかけにはいいものです。最初の一歩を踏み出すときは誰だって怖いものです。しかしそこで一歩踏み出す勇気を与えるのは、根拠のない自信です。何かにチャレンジするときは、「なんとかなるっしょ」みたいな気持ちを持つことはとても重要です。

でもその先を進もうと思ったら、自信は根拠が必要です。

根拠のない自信はどこまでいっても根拠のない自信です。その自信には根拠がありません。壁に直面するたびに、自信の表面が透けていき、自信がない自分があらわになってしまいます。踏み出した先を進むには、自信にしっかり〝根拠〟をつけてあげる必要があるなと、この一連の出来事を通して学びました。


#毎日女子 をやったことで、イラストに関しては自信がつきました。しかし、漫画の方はまだまだ根拠が足りません。漫画はまだ「これだけやってきたんだ」と思えるほど描いていないからです。今年のぼくの目標は『量』にしました。今年は漫画の方で、根拠を裏付けるための量をこなしていきます。

本当の意味で漫画に自信をつけて、世界に通用する漫画を届けていきます。


今日のお話は以上です。それではまた明日。


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●かいち|漫画家
1991年、秋田県生まれ。20歳から漫画家を目指す。出版社に6年間漫画を持ち込むも実績ゼロ。26歳フリーターという現状に悩み、夢を諦めかけたが、ネットの可能性に掛けて再起。Twitterを中心にネットで漫画を公開。自身が仮想通貨で300万円失った体験を元に描いた漫画『仮想通貨体験記』が話題になり、Google検索「仮想通貨 漫画」のキーワードで検索1位を獲得。Twitterに投稿したエッセイ漫画『成功したいなら、成功している人の意見を真に受けろ』が1.2万リツイートを超え、Yahoo!ニュースに掲載。その他の作品に『Decade(ディケイド)』『かいちの幸せの見つけ方』などがある。


#毎日女子 を達成するまでのエッセイ『継続できなかった僕が366日の毎日イラスト投稿を達成するまでの話』をnoteで連載中▼


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