科学ニュースSF(2):脳と壁

科学ニュースSFの第二弾です。思わせぶりなタイトルをつけるというのも必要だなぁと無い脳を絞っています。

脳と壁

 死者の脳をスキャンし、ニューロンの接続網をそのまま記録して、生きた脳細胞として再現する技術がついに完成したので、僕はそれで起業し、巨万の富を得た。犯罪捜査には大変に役に立ったし、死者を諦めきれない人が死者を蘇らせる事例については倫理的な問題が追及され、バッシングにもあったが、それを耐え抜き、結局僕は長者となったのだ。

 そして僕は、二六〇〇年前の脳を手に入れた。これはすごい。
「大変な歴史的研究ができそうね」
 富を築くどさくさに紛れて妻も娶った。妻は妻で、金目当てとか適当なことを言う人々を退け、きちんと自己を確立したチャーミングな女性である。
「歴史的研究?」
「違うの?」
「そんなのは歴史学者に任せておけばいい。僕は脳科学者だぞ」
「脳の器質的な研究であれば、二六〇〇年前であることにあまり意味はないんじゃない?」
「何言ってるんだ。僕はこれで研究なんかしない。もうひとつの夢を叶えるんだ」
「もうひとつの夢……?」
「学生時代、僕は有明に入り浸っていてね。年二回」
「え、コミケ……?」
「万年ピコ手だったんだ」
「……ジャンルは?」
「男性向創作」
「いったい二六〇〇年前の脳とどういう関係が」
「この脳はギリシャ神話が形成された時代に生きていた可能性がある」
「……!」

 どうやら、妻はそれだけで察したようだ。しかし念のため解説を加える。
「僕はギリシャ神話はもっとも変態的な創作の根源だと思っている。あの神々の変態ぶりを見ろ! やりたい放題じゃないか。だから、これは脳はそういう、素晴らしい創作が行われた時代の脳なのさ。僕はこの脳に創作をして貰って、それをプロデュースして壁サークルになるんだ」
 しかし妻は、祝福してくれるわけではなかった。むしろ怒りの表情が見える。
「ずるいわ! ギリシャ神話には男同士だってある。私にも使わせて! BLで壁サークルになるのよ!」
「え、君は――」
「私も学生時代はピコ手サークルだったのよ……」

 僕たちはどうやら、似た者夫婦だったようだ。

 そうやって、僕たちは計画通りに実行し、無事二人とも壁サークルになりました。めでたしめでたし。

[紹介するニュース]

2600年前の脳が発見されたんですって。
なんかええ感じにタンパク質が凝集すると安定構造になるみたいですね。

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解場繭砥(かいば・まゆと)小説を書く人。主にKindle・文学フリマ・コミティアで活動。 人間関係のねじれたSFを得意とする。食うための職業はIT屋さんの理系作家。