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第3空間としてのストリート、あるいはTikTok

KAI-YOUが定義する「ストリート」は、文字通りのストリートカルチャーとは少し違っていて、そのために毎回説明が必要になる。

以前「KAI-YOU.net」でストリートカルチャー特集を組んだ時に、現代のストリート/ネットカルチャーの濁った部分を凝縮して人間の形に組成してみた、みたいな存在のiLLNESSさんがこう言っていた。

「人間って誰でも空間を所有してるんですよ。俺は、第1空間に家庭や家族、第2空間に学校/職場があって、それで第3空間の遊び場として自分の居場所=ストリートだと定義してます。第1空間でも第2空間でも居心地が悪い人が、第3空間でやっと居場所ができて、ストリートが生まれる。知り合いや友達との輪を広げる場所をストリートと呼んでいるんだと思うんですよ」
https://kai-you.net/article/49405

家からも職場からも学校からも逸脱した場所

インターネットがなかった時代、たぶんストリートが生まれるためには、斎藤環が言うところの“臨場性”が不可欠だった。
https://note.com/tamakisaito/n/n23fc9a4fefec

けど、わたしたちは、コロナ以前から、すでに仮想空間にこの臨場性を顕現させることに成功していて、それがコロナ以降に加速しただけだと改めて気付く。

昨年末、トラップミュージックを起点にこの10年を俯瞰してみせた論考が突如投稿された。

https://note.com/shadow0918/n/nfc6b0845b464

陳腐な表現だけどこのエントリーで彗星のごとく現れたつやちゃんという謎に満ちた文筆家が寄稿してくれたのは、大人が最も向き合いたくない場所の一つ、TikTokだった。
https://premium.kai-you.net/article/245

現実を歪ませる磁場を持った場所、それこそがストリートなのだとしたら、TikTokはまさにその象徴だ。

つやちゃんは、TikTokの魔術、人間の輪郭を変容させる様を鮮やかに叙述している。

歳をとればとるほど、これまでの人生で趣味嗜好のふるいにかけてきた自分にとって純度の高いものだけに目を向け、耳を傾けるようになる。

だから、自分のふるいでは掬い取れなかった何かに気付かせてくれる存在はーーそれは人だったり漫画だったり音楽だったり、たった一つの原稿だったりするーー何者にも代えがたい。

※2020年7月15日にKAI-YOUメルマガにて配信されたテキストです

新見直

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KAI-YOU Premium Chief Editor
1987年生まれ。サブスクリプション型ポップカルチャーメディア「KAI-YOU Premium」編集長/株式会社カイユウ取締役副社長。
ポップリサーチャーとして、アニメ、マンガ、音楽、ネットカルチャーを中心に、雑誌編集からイベントの企画・運営など「メディア」を横断しながらポップを探求中。

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