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クローバー@Hokkaido

明日は首が隠れる服を着てきて。
そう書いてあった。雪だるまの絵と一緒に。

その前日、私は1ページ書き込みを増やしたノートの上に、白い封筒を置いた。自由に使えるお金がない私は、なにも贈れるものがない。それを知っていた彼から、この封筒を渡された。開くと立体的な雪だるまが飛び出すグリーティングカード。雪だるまのお腹を押すと、メッセージが録音できる。ピッ、という音を聞いて、私は息を吸い込んだ。

向かって左、いつもの場所。白いノートの上に、黒い小さな箱が載っている。包みにプリントされている鮮やかな花と、かかっているリボンの色には見覚えがある。絶対に親に欲しいとは言えないお店のもの。どんなのが好きなの、そう聞かれて答えた、目一杯背伸びして伝えたその名前。胸が高鳴る。この箱、どこに隠そう…そんな的外れな、しかし私にとってはかなり重要なことを考えながら、ゆっくり、静かにリボンをほどく。音を立てないように。

ストーブは着いているが、まだ息が白い。思わず手を擦り合わせた。
窓には雫がたっぷり着いていて、はっきりと外は見えないが、分厚い雲のわずかな隙間からようやく、太陽の光が差しているようだ。昨夜は曇りだったから、今日はまだあたたかい。

コトン、と箱を置く。じっと見つめた。箔押しされたアルファベットを一つずつ読む。夢みたいだ。蓋に指をかけてぐっと力を込める。しっかりと噛み合っているのか、なかなか外れてくれなかった。ギリ、と擦れる音がする。冬の弱い日差しでも透けそうなほどに薄い紙が何枚も折り重なっている。そっと指を入れて、左右に押し開いた。

透明な石。短い私の人生の中に、その石の名前はまだなかった。
銀の枠に埋め込まれた4つの石。そっと手に取れば、さらっとした鎖が流れるように現れた。手のひらにそっと置く。留め具を開き、外す。右手で輪を開くと爪がカリッと音を立てた。込める力を保ちながら首の後ろへまわす。

繊細な銀に包まれた、透明なクローバーが首元にたどり着く。黒い暗幕に隠されて。誰にも見えないように。私にも、彼にも。

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