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作家KAIオリジナル直感小説|story7「間に合わなかった指輪」


これまでのあらすじ
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作家KAIオリジナル直感小説
をまとめた無料マガジン


本編
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「だから 僕は歌いつづける」



きっと
どんなに色褪せても
消えることのない記憶


向日葵が今年の夏も咲く__。


                           souの過去



ギターの横に
大切に置かれた指輪
それは
ある女性に
贈るはずのものだった、、、。



彼女は
夏がよくにあう女性だった



向日葵のように
明るく華やかなオーラを纏(まと)い
口を大きくあけ
大袈裟なくらい
よく笑うひとだった




出逢いは
今から半年前のある夜





souは
仕事のつきあいでの飲み会あと
疲れと酔いがまわり
ふらついた足どりで
歩いてるいると
柔らかな灯りのネオンが視界に映る




BARと書かれた看板に
ひとりで飲みなおし
ゆっくりしようと
BARまで繋がる地下への階段をおりた





重みのある
お店のドアを開くと
薄暗い空間にjazzが流れている



入口近くにある
小さなカウンター席をみつけ
ど真ん中の席にすわる




綺麗に整えた髭が異様ににあう
渋い男性がカウンターの中から
こちらに向かって軽く会釈をする



sou「ウイスキーロックをお願いします。」



カランカラン___。
グラスを傾けながら
氷の重なりあう音と
アルコールの強い香りを楽しむ



さらに
薄暗い空間と
心地よく耳に辿りつくjazzが
さらに酔いを深めた




jazzが
ぷつりと途切れたかとおもうと
空気を一変させるかのような
柔らかなピアノの音色が鳴り響く




souは音色のほうに
惹き寄せられるかのように身体を傾けた

さっきまでの酔いが
醒めるかのような
つよい衝撃を受ける




黒のシンプルなドレスを
華やかに纏(まと)い
しなやかにピアノを弾く女性



凛とした姿勢に
細長い指先をしなかやかに動かし
柔らかな表情で
愛おしそうにピアノを奏でる





瞬きすらできずに
彼女の姿にくきづけになる




ピアノの音色が
ゆるやかに途切れ
店内にいた数人が
彼女に向けて拍手をおくる



ハッと我にかえり
慌てて
手を重ねようとしたときには
彼女が
カウンターに向かって
歩いてきていた



「マスターいつものをひと口だけ♪」




キリッとした顔立ちに
長く伸びたまつ毛

遠くからでは気づかなかったが
高身長で
手足がスラッと長く華奢
サラサラのロングヘアに
惹きつけるほどの
華やかなオーラがある




見惚れているsouに気づき
横目で
チラッと視線を合わせる




sou「素敵でした!!ピアノも!」




彼女はsouの言葉を聴くと
顔をくしゃくしゃにして
ふわりと笑った




「ありがとう♪」





彼女は目の前に置かれた
ショットグラスに指を絡ませ
ひと口ふくむと
ゆっくりと席を立ち
店をあとにした




2度目の声をかける暇もなく
立ち去った彼女に
傍にいたマスターをつかまえ
慌てて質問を投げかける




sou「あの女性は!?」




マスター「あぁ…彼女?
              彼女はね、月1度ピアノを弾きに
              来てくれていたんだが…。
              今夜でラストだった。
              君は運がいい。」



sou「ラスト、、、そんな……。」



一目惚れ____。
それ以外の言葉を
名付けられないほど
一瞬にして心を奪われる恋だった





次の日
気づけば海にきていた
無心になりたいとき
僕はよく自然に触れる




砂浜に寝っ転がり
サングラスで視界を塞(ふさ)ぐと
大きなため息をついた



「くすくす。大きなため息ね。」




聞き覚えのある声に飛び起きると
そこには
ゆうべの彼女がいた




真夏なのに
一切焼けていない
透き通るような白い肌

モデルのようなスタイルが
水着をより惹き立たたせる

さらに
サーフボードを抱きかかえ
凛とした表情で
こちらをみている






ゆうべの姿からは
似つかないクールな雰囲気だが
" 彼女 " だとすぐに気づいた



souは
あわてて飛び起きる




sou「あの!昨日BARでピアノ
       弾いていましたよね!?
       一目惚れなんです!!」




彼女は目を丸くしたかとおもうと
くるりと表情を変えて
ふわりと笑う




「ピアノそんなに好きなんだ!」



sou「違う!!あ、違わないけど。
       あなたに一目惚れしました!!
       付き合ってください!」



普段なら
こんなにカッコつかない告白は
絶対にしなかっただろう

彼女を前にすると
ついぽろぽろと
感情が湧きあがってしまう





彼女はつつみこむような
柔らかな眼差しで
向日葵のように
華やかに笑った





カッコつかない自分を
カッコ悪くさせないでいてくれる
彼女の存在が なお愛おしかった



ゆっくりとsouの隣にすわって
ピアノの鍵盤にマネて
砂浜を
指先で優しくふれる



souは
彼女の指先にあわせて
歌声をのせる





「え!綺麗な歌声。
  ね、ね、もっと聴かせて。」





単純だとはおもうが
胸の高鳴りを抑えきれず
歌声に想いを込める__。





souの透明感のある透き通った声が
波音にのせられて
ゆるやかに
響きわたる






「君の声、しっとりしてるのに
  歌うとココに グッと刺さるね。
  歌を歌うの好きなの?」



そういって
彼女は
自身の胸に
ゆっくり手をあて
柔らかな口調で 笑った




sou「好きなのかなぁ…。
       んー。なんだろう…。
       ミュージシャンとまではいかないけど
       歌は歌い続けてたいなって。」




「ん?ミュージシャンになりなよ♪
  やりたいならやろう♪
  人生はさ、いつ何があるかわかんないんだから
  迷ってる暇ないぞ♪」






その言葉に
隠された深い意味を__。
僕が知るのは
そんなに時間がかからなかった




それから
何度も " 約束 " という
彼女を繋ぎとめる口実を繰り返し
僕らはつきあうようになる






しかし
あのBARの日以来
彼女は僕のまえで
ピアノを弾く姿を
みせることはなかった



明るく
華やかなオーラをもつが
あまり多くを語らない彼女と

朗らかなsouの雰囲気が
" 大事 " なことを包むかのように
時を重ねる





sou「1番小さなサイズでも
       ぶかぶかなんじゃないか…。」





人生で はじめて
プロポーズのための指輪をえらぶ





一生に一度___。
そうおもうと
どうしても ひとつが決めきらず
時計が もう2周ぐらいしている





どんな指輪でも
きっと彼女なら喜んでくれる





でも
一生に一度、
僕だけが喜ばせることができる瞬間を
簡単に決めたくはなかった





時計が3周するころ
ようやく決めた指輪を眺め
彼女の向日葵のような笑顔と重ねる




待ち合わせのお店に早くついて
緊張した面持ちで
彼女をまつ






ふだんは気にならない
時計の針の音が
心臓の音をはやめる





sou(プロポーズってこんなに緊張するのか…。)






しかし
彼女は時間になっても
姿をあらわすことはなかった




時間のルーズさを
なにより嫌う彼女が
時間になっても現れないことに
嫌な予感がする




これから起きる出来事を
現すかのように
空模様も
次第に 大雨になっていく





何かあったんじゃないか!?





彼女に電話をかける
(…ただいま電波が…)





指輪が濡れないように
鞄の奥にしまいこみ
お店のスタッフに事情を伝え
外に飛びだす




彼女の行きそうな場所…
僕はどこも思いあてることができなかった





僕は
ただ雨の中を
立ちすくむことしかできずにいた





そのあと
彼女が亡くなった____
と彼女のご両親から
一本の電話がはいる





彼女とはじめて出逢った日
彼女は
ガン宣告を受け
余命半年だと伝えられたという




でも彼女は
海で僕に告白された日に
笑うことを最後まで選んだ


自然と
つきあう日が来ることを
察した彼女は


僕といる時間を
最後の日が来るまで隣で
笑っていようと覚悟したそうだ



なにひとつ
つらい素振りを見せなかった彼女の
浮かぶ姿は
いつも いつも笑いかけてくれた
向日葵のような笑顔だった



電話越しに
泣き崩れながら
朝までそこから
1歩も動くこともできなかった



          一番大切なひととは一緒にいられない

あの日から僕の中で
消せることはない想い




寂しがり屋の僕に
彼女は最後まで笑いかけてくれた
あの向日葵のように____。




つづく



              7話はsouからのリクエストに
            もとずいて " 直感 " で描きました

きっとsouご本人のお人柄なら
真反対で
スマートに振る舞えるであろう恋愛を
敢えて真逆の恋愛スタイルが
直感で浮かんだので
儚い恋を描きました









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