喪服コーデとブラックコーヒー

服の好みというのは、
人それぞれだ。

本当に人それぞれだけど、

平日の朝8時と夜18時、新宿駅を通るとそこには黒とグレーと時々濃いめのネイビーなんかをまとった人で大勢だ。

1日の利用者数が世界第1位と言われている新宿駅で、あれだけの人がいるのにそこには色彩があまり見当たらない。

青色コーデ

その日わたしは、
似合うかどうかより一目惚れして購入した青よりのネイビー、いや、ネイビーよりの青ともいえるニットのワンピースを着て、青いベレー帽をかぶって新宿にいた。
そして、当時仲の良かった(結婚したら疎遠になってしまった)黒人男性とご飯に行く約束をしていた。

黒とグレーの中に、青い女の子が黒人といるというのは少しだけ目立っていたような気もした。

青コーデだったわたしは、その日やけに人の着ている服の色が気になった。だからいつも以上に周りを見渡していた。
でも、360度、黒黒黒、ほぼ無彩色の新宿駅だった。

その時、「うわ～。みんな個性がなくてつまんない。」

と、思ってしまった。(若かったもので・・・）

そう思ってしまった自分を裏切るような行為をするのもなんなので、
それ以降わたしは意識して黒は気なくなった。

もともと、黒よりも茶色の似合う顔立ちというのと、
もともと、茶系が好みというのもあり、そんな黒なし生活はすんなりと送れるようになった。

そしていつしか本当の本当に、クローゼットから黒が消えた。
(ユニクロのヒートテックインナーとタイツはもっぱら黒、それから1枚だけ黒色の気に入っているロンTをたまに着るようで持っていたけどね)

ブラックコーヒー

その日は朝から憂鬱だった。
気分はブラック。

その日は暗めの服を好んで選び、
いつもよりも早めの電車に乗り仕事へ向かった。

cafeでコーヒーでも飲んで、気分転換をする為に。

cafeに入ると、普段は決まってカフェラテ、ないしはカフェオレを頼む。

ただ、心がモヤモヤして気分が良くないときは、何故か普段は絶対に選ばないブラックコーヒーが飲みたくなる。

気分がブラックだからという理由で。(単純)

正直今ならブラックコーヒーも飲めるようになったけれど、当時のわたしはブラックが苦手だった。
いつも、そんな時に限ってわざわざブラックコーヒーを注文した。
そしてそんなブラックコーヒーを前に
「うえっ苦っ〜、まぁ人生そんなときもあるよね」

なんて一人で感傷に浸り、結局飲みきれなくて少し残して(残すのは良くない！）

やっぱり次はラテを頼もうと決めて、
「苦手なことをわざわざしてバカなことはするもんじゃないね〜」

なんて少し自分を客観的に見て元気を取り戻す。といったことをしていたものだ。

喪服コーデ

黒は着ない。と決めてから、かれこれ5年ほど経っていた。

もちろん、「絶対黒は着ない。」という決まりもないしそこまでがっちり決めたほどではないので、

相変わらず1枚だけ持っているお気に入りの黒のロンTはたまに着ていたし、
そもそも、黒い服を着るよりも、
心が茶色やベージュ、白、そして黄色や赤、ピンクなど色味のある色を着たがっていたから、なにも不自由はなかった。

黒(とグレー)以外の色で楽しくファッションを楽しんでいた。
(ちなみにわたしはグレーも苦手だから、グレーも極力着ないし、グレーのものに関してはなるべく買わないし、身につけないようにもしている。)

でも、ある時から少しずつ黒のレパートリーが増えていたのを自分でも薄々気づきはじめた。

（だからなんなんだという話ではあるけれど・・・！）
黒を着たところで、買ったところでなにも問題はないのだけど、とにもかくにも4,5年の色ファッション生活に、ついに黒が復活しはじめた。

そして、”その日”は訪れた。

”全身黒のブラックコーデday。”

その日の少し前からなんだか鬱々とした日々を数日間送っていた。
なんだか気持ちが晴れない。
モヤモヤしていた。

それまではなんの躊躇もなく着ていた赤やピンクや黄色の服を、なんとなく着たくない気分になっていた。

そして、気分が最高に良くないその日、
満を持して全身黒のブラックコーデを作り上げた。

その日は、
今日は上司になにか嫌味を言われるだろうとわかっていたので(前日に思い当たる節があった)朝から気分があがらなかった。
そんな時に明るい服を着ようとは思えなかった。
いつもは明るい色を好んで着るのだけど、
怒られるのをわかっていながらルンルンした色を着る気にもなれなかった。
そして、思いついた。

「今日は、全身黒で行こう」と。

そして会社に着いて、先輩に（怒られる方とは違う方）今日は怒られるの覚悟しています。なので「全然黒の”喪服コーディネート”で来ました～♪」と言いかました。

嫌なことは自分のユーモアで乗り切ろう。そんな感じだった。

その日から気分の良くない日は、”喪服コーデと名付けた全身黒色の服”で、なんとなく気分と服をマッチさせてなんとなく自分を客観的に見て、これもまた、「わたしってば、面白いことするわね。」なんて思って元気を出している。

そして、全身黒って、やっぱりキマルしお洒落。
黒って、着やすい。
あ～黒って、いいじゃん。（あたりまえ）
普通に、今後もたまには黒も着よう～なんて思って黒の良さを再確認した。

黒って、かっこいいね！

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