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第1部 ロマンス詐欺にあいました♡part2 ~盗まれたもの~

はじまりはこちらです。


< 盗まれたもの >
私の生活は急速に忙しくなっていった。
私は私の身の上におこっていることが信じられなかった。
彼に会う数週間前、私のフォロワーさんが急に増えたことがあった。
それがこぞって星読みの人やカウンセラーの人たちだった。
カウンセラーは過去の精算をすることを勧める人たちだったし。
星読みはこれからの未来を見る人たちだ。
私は私の身の上に何がしかの変化が現れることを感じていた。
ある日、タロット占いをして珍しく未来を占った時。
外国人の恋人が現れると出た。
私は占いが好きな割には結果を信じきれない時があるので、この時もまさかという感じだった。

相手に娘がいることで、私は慎重にならなければならなかった。
普段入ってこない情報も耳に入ってくるようになった。

外国人がどうやって日本に住むのか?
どの不動産会社なら保証人はいらないのか?
後妻さんたちが子供たちと距離を縮める方法。
上履きを真っ白に洗い上げる方法。
彼の国の家庭料理。
今まで考えてもいなかった情報が続々と集まってきた。

彼はウクライナのリヴィウにいたので、電気の回線が悪いらしく時々連絡が取れなくなった。

あるとき、彼の会議が長引いた。会議の後、彼は失望していた。

リヴィウでの契約は二ヶ月半と迫っていて、彼はそれを心待ちにしていた。

悪い知らせだ。、、、。私たちは残りの契約日数、、キエフに派遣されることになった。今日理事会で決まった。

それは死を意味するも同じだった。

彼は言った。”しかし、私は娘のために生きて帰らなければ。”

” あなたはきっと大丈夫。あなたに神のご加護があるように。”
私はそう答えるのが精一杯だった。

彼は私に重い口を開いた。私は30年間、整形の医師として働いてきた。
ここリヴィウへ来たのは契約によって。
莫大な報酬がある、ということだったけれど、私は気が進まなかった。
しかし、メンバーとして加えられてしまった。
レヴィウに来てからの報酬の半分は金庫に入れて持ち歩いている。
キエフは危険な場所だ。持ち歩くことはできない。
日本人であるあなたにこの大切なお金を預かって欲しいのだ。

私の心臓はドキドキし始めた。
彼は気の毒だけど、そんなことしたら父母に叱られるだろう、、、。
しかし断れるだろうか、、、。
もしも引き受けたとして。もし彼が悪い人だとして。
どのように、私からお金を巻き上げるつもりなんだろう?
もしも金庫の中身が白い粉だったら?
彼が死んだと称して他の人が金庫を取りに来ることも考えられる。
彼が悪い人でないとしても、もしもその荷物がそんなに重要なものなら、
誰か悪い人が取りに来るってことも考えられる。
最悪の結果をもたらしたらー?
私たちには時間がない。
早く結論を出さなければいけない。
だけど、、、。

私はあなたにいくつか質問したいと聞いた。
取りに来るのは本当にあなたなのか?
でなければ、私は渡すことができない。

” 私が必ず取りに行く。
 契約が終わったらすぐに娘と二人で。日本まで。”

” あなたは8月には自由の身になれるのか?”

言ってから、しまった、と思った。
このような戦時下では契約なんか反故されることも考えられる。
戦争が終わるまで、彼は縛りつけられるだろう。
彼は黙っていたが、口を開いた。

” 私はこの申し出を当然のこととは思っていない。”
私は答えた。
” お金は確かに大切だ。だけど、今は生きて帰ること。
 あなたはこのお金が途中で紛失することは考えられる?
 もしもすべてを失ったとしても、あなたほどの人ならまたやり直せる。
 あなたは稀有な人だから。”
彼は黙って聞いていた。
私は付け加えた。
” もしも無一文になったとしても、、二人が日本でしばらく暮らすぐらいの蓄えなら私にもある。あなたもそのつもりでいて。”

すると、彼は意外なことを言った。

” 私は自分のことは自分でできる。このお金で私は日本での夢を叶えたい。”
私は彼の自尊心を傷つけたことを恥じた。
だけど言わなければならなかった。

” あなたが、もし悪い人だとして。
もしその中身が白い粉にすり替わったとして。
私は刑務所に入れられるだろう。
しかし命までは取られないだろう。
わかった。その荷物は預かります。”

彼は非常に落胆していた。
私は今までの人生でずっと誠実で正直であり続けた。
誰に対しても。
信じてもらえなかったことが残念だ。
彼はそう言った。

私はその時、、、。ああ、もう結婚はなくなったな、、、そう思った。



それから、、日本へ荷物を運ぶためのミッションが始まった。
私は安全な宅配業者に頼むことを念を押した。
彼から制服・書類・金庫その他もろもろの物が入っていることを確認した。
彼は荷物の写真を撮り、、、私に送った。
次の日、宅配業者に荷物を運んだことの連絡が入った。
英語の問題は日本語のできるスタッフがいるので大丈夫とのことだった。
宅配物は、ときおり連絡が入り、、ウクライナを出ること、、そして韓国に着いたこと、、明日には日本へ着くこと。
随時連絡が届いた。すべてうまくいっていた。

玄関先で荷物を受け取ることになっていた。
彼からLINEで届いた証明書を見せればいいだけ。
仕事もちょうど休みに差し掛かっていた。
家族には内緒にした。誰にも言わなかった。

そして日本に荷物が届いた頃。
この宅配業者から一通のLINEが届いた。

××様。
荷物は日本に到着しましたが、通関のために保留されています。
通関額は5000ドルです。
通関手続きは荷物が玄関先に届く前に支払う必要があります。

できるだけ早く対応していただきたいと思います。
早急なご返答お待ちしています。

××××××××サービス



私は、この時、、、、、、、、、すべてを理解した。
その足で私は警察へ向かった。
対応してくれた若手の警官は親切だった。

ー そう、、ロマンス詐欺でしょうね。
ー こういうのって計画的なんですか?
ー そういうこともあるし、行き当たりばったりってこともある。
ー 私ターゲットだったのかしら?
ー ターゲットかもしれないし、わからないですね。

彼は話を聞きたそうにしてくれたけれど、生活保安家の担当者に引き継がれてしまった。
年配のその男性は、通り一遍の話を聞くと、
ー よくある詐欺ですね。気をつけてください。
  もう連絡を取らないでください。
と言って私を送り出した。


帰途につくと、彼から連絡が入っていた。
” ハニー、今すぐ彼らと連絡を取って欲しい。追加の料金を払った。
少額でいいんだ。助けて欲しい。”
私はそれには返事をしなかった。
その後、彼から2~3通のLINEが入った。
それもそのままにした。
夜になって私は彼に1通のLINEを送った。

” 今まであなたとたくさんの夢を見た。
 本当に楽しかった。
 感謝しています。”

そして私は少し泣いた。

2023年5月 2日に始まった私たちの出会い。
5月 23日にそれはあっけなく終わった。

後悔していることがある。
私は彼に愛していますと伝えてしまった。
諸々の事情から、
私は愛している、という言葉を誰かに伝えたことがなかった。
でも彼のことを本当に好きになってしまって。
その言葉を彼にあげたくなってしまった。
返品不可かな、、、。

彼から学んだことがある。
一生懸命生きること。
いつもエレガントでいること。
時を大切にすること。


ー 私が彼に感謝しているのは本当のこと。ー





                  第1部  終わり♡

   創作大賞、応募してます。スキくれるとうれしいです!!!

第2部 夢を与える に続きます。
いよいよ、彼の秘密に迫ります。

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