感想 『愛なんか』 唯川 恵
『愛なんか』唯川恵 幻冬舎文庫
恋愛は少しもロマンティックなものでも、甘やかなものでもない
むしろ、自分のいちばん見せたくないところ、認めたくないところ、が出てしまうような気がします。
恋を前にして、衿を正しているなんて、何てつまらないのでしょう。
共感できる気もするし、逆に反論したくなる気もする。あとがきです。
私にとって恋愛はロマンティックだと言いたいけれど、ロマンティックでいたいんじゃないの。過去だけ美化しているんじゃないの、と思う。
恋愛は甘くない。認めたくないところが出る。ドロドロしている。いつも全力。もがきながら恋愛している。
いっそ好きじゃなくなればいいのに、と頻繁に思うのに、それを脳が許してくれない。どうしても好きだ。
心は荒れている。彼のことで頭がいっぱいになる。全て捨ててもいいんじゃないかという気さえする。狂って堕ちたいとも思う。公美のように。
でも計算高い自分もいる。他人の評価を気にしている。着飾って、メイクも研究して、ふさわしい相手と出会い、常に自分を磨き続け...勝ち続けたい。『幸福の向こう側』の「私」のように。
私はどうなりたいんだろう。
スタイルのいい、可愛い女になって、面白くて優しくて一途な男性とお付き合いして、いい女で居続けたい、愛され続けたい、でも平凡で幸せな家庭も築きたい。愛ってこういうことだなって、ちょっと安っぽいかもしれないことを思って、何となくいい人生を送りたい。
表面にあるのは前者だけ。だからこそ真一の言葉がとても胸に刺さった。
「けれど、僕は君のように、人生を戦場にするつもりはない」
「君は本当は後ろめたいのさ。自分の選択に自信がないんだ。だから僕にも同じことをさせたがっているだけさ」
幸福って、何だろう。愛って、何なんだろう。
愛してるって言い合うことなのか?何も言わなくても何となく一緒に居るのが当たり前になること?セックスしたいと思うこと?デートしたいって思うこと?単なる交際や結婚の契約?
私の答えはまだまだ見つからない。今も、恋なんてしなければいいのにと思いながら、何となく、理由もわからず、猛烈に恋をしている。
死ぬまでに答えがみつかるといいんだけど。
この人の小説、また読みたいな。
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