水には記憶する能力がある。
今でもしっかり残ってるの、
体中の水がちゃんと覚えているの。
水は、世界をつなぐから、
どうか、水だけは覚えていてとギュッと願っている。
勢いで乗った終電江ノ島行き。
そこに何があるかなんてわからないのに、
朝が来ることだけはわかっていたから
真っ暗な島に飛び込んだ。
街灯もない街で、
私たちは波の音を聞いたね。
光もない、
静まり返った世界で地球の呼吸を感じて。
愛を知ってしまった私たちに
欲しいものは何一つなかった。
江ノ島までの大きな橋を
スキップしながら歌って歩いた。
他には誰も聞いていない、誰も見ていない、
私たちだけの愛の世界に安心して。
月明かりだけを頼りに、
私たちは歩いていたね。
街灯の明かりも眩しいくらい、
でも月の明かり一番確かなこと、私たちはわかっていたね。
愛を知ってしまった私たちに、
必要なものは何一つなかったね
大丈夫陽は昇るね
わかりきっていることに安心して
東海道線で目をつむる。
起きたらまた、いつもの毎日が待ってるけど。
この夜のことだけは、
どうか、覚えていて欲しい。
水だけは、体中の水だけは。
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