愛しいストーリーを手放すことをプロという。
長野県は下諏訪町にある、ninjinsanという古道具屋さんのファンになって、早3年半がたちます。
ninjinsanは、やっちょさんというおじさんが1人で始めた古道具屋さんです。やっちょさんは、1人でお店を改装し、好きな物をこつこつと集めています。今では、歳上のお弟子さんにも慕われている人気っぷり。
カルチャーを作りたいんだよね、と笑っていたやっちょさんの事を、当時も今も超リスペクトしています。
下諏訪に遊びに行く度に私はninjinsanを訪れます。
やっちょさんは気に入ったものしか仕入れないらしく、お店にあるものすべてを把握しています。
「これはいくらですか?」って持って行く度に、愛しそうに古道具を眺めて値段を伝えてくれます。
やっちょさんは、値段よりもこの古道具がいつどこで使われていたもので、どこで手に入れたのかということを話してくれます。ゴツゴツとした、柔らかい手に愛されて来た古道具たちを、お金というものと引き換えに、譲ってもらうのです。
やっちょさんが愛おしそうに古道具を眺めているのを見る度に、そのストーリーにはお金をつけられないのだということを実感します。今ここにあるものの、尊さと愛おしさだけを、味わう事しかできないんだと思うのです。
今まで何度もやっちょさんのもとを訪れ、
可愛い包装紙や、アロハシャツや、食器や、、、とにかくたくさんのものを譲っていただいてきました。そんなわたしですが、今更気付いちゃったんです。
「本当に気に入っているものしか集めていないのに、それを誰かに渡すなんて、、、、!!」
優しすぎる。。。気に入ったものを快く手放すなんて、そんな事わたしにはまだできないと思いながら、やっちょさんに話してみると、
「師匠が言ってたんだよ、本当に気に入っているものを手放せるのがプロだってね。、、」って。
私が今回譲り受けた小さなコーヒーカップを愛おしそうに眺めながらどこか儚げに話していました。
私は今更、やっちょさんの優しさに気付いた。
古道具屋さん、ストーリーと巡り合わせと、そのすべてを愛することのできる、しなやかに強い人しかできない仕事。やっちょさんにしか出来ない仕事。
きっとまた遊びに行きます。
そして、このコーヒーカップを大事に使います。
ありがとうやっちょさん。
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