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大手パーソナルトレーニング事務所は素人指導で圧倒的な成果を出す



 パーソナルトレーナーの価値の源泉は、「知識」と「応援」と一般的には言われている。健康や運動に関する専門的な知識を用いて指導を行い、顧客が健康的な運動習慣と食生活を保てるようにサポートする。これが成果を出すパーソナルトレーナーである。

 しかし勘違いしてはいけないのが、パーソナルトレーナーの知識の質・量と、顧客への付加価値は比例しないのである。あなたがどんなに知識豊富なパーソナルトレーナーでも、室伏広治や本田圭佑に対して知識を用いて彼らを感動させることは難しいであろう。

 一方で、新米のパーソナルトレーナーやちょっと健康に詳しい人であっても、「痩せたいのでお肉をやめて、お米や根菜をお腹いっぱい食べてまーす。」みたいな人に対してであれば、目からウロコな知識を提供できるであろう。

 すなわち、付加価値とは、「顧客の知識」と「あなたの知識」の「差」なのである。

 さて、そろそろ大手パーソナルトレーニング事務所の戦略が見えたであろうか。(個人で独立系の)優秀なパーソナルトレーナーと大手事務所のマーケティングを比べてみよう。

 優秀なパーソナルトレーナーは日々、知識を研鑽している。さらに、マーケティングを意識しているパーソナルトレーナーは、その専門性を文章や動画にしてネットで広めている。健康に興味があり意識が高い人々は、そういったパーソナルトレーナーの記事を見比べて情報を得て、時にはトレーニングを依頼することもあるであろう。そういった顧客は厳しい目でトレーナーを見るし、支払う金額にもシビアである。

 一方、「ウーバーイーツ食べ放題!」みたいなYouTube動画にパーソナルトレーニングの広告を出したらどうか。集まる人の多くは、食事や運動の知識がない人たちである。「がんばろう!食べすぎないようにしよう!運動もしよう!深夜のラーメンはダメ♡」で成果が出せてしまう。

 ライザップのCMには、ライザップのスタッフのプロフェッショナリティーが打ち出されていない。「この人は痩せた!あなたも痩せよう!」、「あなたが痩せることを保証する!」というシンプルかつ強力な2つメッセージをうまく表現している。

 業界では有名な話であるが、ライザップのトレーナー採用で問われるのは、運動指導の経験や食事の知識ではなく、コミュニケーヨン能力と爽やかさである。知識や経験など、マニュアルでカバーできるからである。

 大量にマスにCMを打ち、「運動や食事について良くわからないけど、痩せたい。大金だけど、痩せれるなら払ってしまおう」といったタイプの顧客を集める。そして、マニュアルによって得たそこそこの知識しかないが、素敵な笑顔と高いコミュニケーション能力を持ったトレーナーが指導する。それがライザップのビジネスモデルである。広告費こそ高いが、顧客の支払う金額(売上)とパーソナルトレーナーの給与(費用)に圧倒的な差ができ、粗利益率が非常に高くなる。

 素晴らしい個人のパーソナルトレーナーは多い。しかし、トレーナーが優秀であるかとビジネスとして儲かるかは、全く別の話なのである。

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