大豆のタンパク質の正体についてざっっっくり書いてみる
先週、大学院修士の研究時代に愛読していた研究本「大豆の機能と科学(朝倉書店、2012)」が届き、復習のために冒頭から読み進めている。
読み進めていけばいくほど、自分自身まだまだ大豆について知らないことが多いと自覚するし、過去の偉大な研究者の成果をたった4000円程度の書籍代で体系的に学ぶことができることには感謝しかない。
一般の消費者の中には、大豆や豆や豆腐の栄養性・機能性について、表面的な知識で書かれた記事を読んで誤解している人もいると思うが(例えば、豆乳は体にとって悪いなど)、科学的に正しく理解すればそういう極端な議論はそもそも生まれることはない。
僕のブログでは、そういった世間の誤解を解いて身近な人に豆腐の消費を増やしてもらうためにも、大豆や豆腐類の正しい科学を解説する回を増やしていきたいと思う。(自分自身の勉強の定着の意味もあるが)
今週は、世間で一般的に言われている「大豆タンパク質」の正体について解説する。
大豆タンパク質の正体
大豆は「畑の肉」と呼ばれているほどタンパク質が豊富な食物で、アミノ酸のバランスにおいても非常に優秀である。
例えば、お米や小麦やトウモロコシなどの穀物に含まれているアミノ酸の中で、必須アミノ酸の一つであるリジンは含有量が少ないが、大豆にはリジンが豊富に含まれていて、豆腐や納豆で一緒に食べると、お米のアミノ酸の吸収も促進されることが分かっている(鎌田、2003)。昔から日本食で食べられてきた「ごはん+お味噌汁+納豆」の組み合わせは、アミノ酸の吸収効率の観点からも理にかなった組み合わせだったよう。
ところで、もし大豆加工に関わる人が「大豆タンパク質の正体って何?」と聞かれたらどう答えるだろう?
「分子量平均○○のポリペプチドの集合体」、「アミノ酸組成が○○のタンパク質」、「液中で平均粒径約数十nm~数百nmのコロイドを形成する粒子」などなど色々だと思うが、どれも間違いではない。
一応、漏れなく挙げるとすれば、まず大豆タンパク質は「貯蔵タンパク質」と「非貯蔵タンパク質」の二つに分けることができる。
貯蔵タンパク質は、大豆の種子中にあるタンパク質貯蔵液胞(プロテインボディと呼ばれている)の中に貯蔵されていて、大豆のタンパク質の60~70%を占める。水と一緒に大豆を砕くと、このプロテインボディが破裂して貯蔵タンパク質が水に溶けだしてくる。(砕かれた後の大豆はこんな感じ。↓)
非貯蔵タンパク質は、大豆の生理活性に使われるタンパク質がメインになっていて、何種類もの酵素がここに分類される。
中には、腸内で分泌されるタンパク質を分解するための酵素トリプシンを分解する作用を持つ酵素(トリプシンインヒビター)もあるのだが、加熱によって効力を失うので、豆腐や豆乳・煮豆などで食べるうえでは問題ない。
大まかにまとめると
以上をざっくりまとめると下にある図のような構成になっていて、豆乳が凝固して豆腐になるのは、主に「貯蔵タンパク質」の存在によって起こる。
詳細には、タンパク質のサイズによって、7Sグロブリンとか11Sグロブリンなどの名称が付けられているが(渡辺ら、大豆とその加工I、1987)、グロブリンの詳細は豆腐の品質と密接に関わっており情報が多く深いので、詳細はまた別の機会に書こうと思う。機能性についても、今後のブログの中で書こうと思うが、今週はここまで。
(29週目終わり)
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