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指先に星。

チョコのラメがネイルに似てるー!と嬉しそうに写真を撮った妻。
彼女がネイルにハマったのは実は最近だったりする。


少し、長い話を書こうと思う。

ある日、妻が鬱になった。
僕が先に鬱病で倒れ、娘は1歳になったばかりの手のかかる頃。妻には本当に苦労をかけた。
そして僕が鬱から徐々に回復をしはじめたころ、今度は妻が罹患してしまう。
ただ彼女の場合は僕とは違い、倒れる一歩手前で
「夫を見てたからわかる、これ私倒れる一歩手前だわ」
と判断して自分で病院に行った。(僕は完全に心が壊れてしまい、玄関で過呼吸起こしてぶっ倒れ、それでも仕事に行こうとして妻に病院に連行された)


今まで彼女は陸上自衛官のヘリコプター整備士という大変な仕事をこなし、娘を育てつつ、鬱病になった僕を相手にしてきた。
そのため、鬱でもなんでもいいから休めるのはいい機会だなと思ったし、本人もケラケラ笑いながらいっぱい休むぞー!と言っていた。

休みを満喫する彼女を見て、正直嬉しくなったぼくだけど、ある事に気づく。

嫁、家事以外はゲームしかしてない。

そういえば、嫁ならではの趣味ってなんだ?

漫画読んで、音楽聴いて、ポケモンカードして、ここまではぼくと同じ。
僕ならではの趣味のボルダリングは今まで行く暇なかったし疲れるからってあまり行かないし、ヨーヨーは誘ったけど断られた、そして共通の趣味は娘がいる時間は基本無理。カードは相手も必要だし。
お洒落?陸自の妻はほとんど暇もなければ土日しか私服来ていなかった。

彼女のストレスの逃げ場はほとんどなかった。

ある休みの日の事。妻が少しイライラした様子でゲームをしていた。とりあえず僕は娘と遊んでいたけど、やっぱりママがよいのかな、妻の方に向かっていく。

「ままー!」
「うるさい!今遊んでるの!パパにして!」

硬直する娘。とりあえず外遊びにつれていくと機嫌はよくなった。妻はその後娘に謝っていたけど、なんというか、僕は自分の無力感に押し潰されそうになった。

仕事や家事を頑張ってくれていた彼女には、趣味もなければ、趣味から来る友達もいなかった。

要するに逃避するべき場がなかったのだ。

ここで話は少し変わる。
12月、僕はとりあえず仕事を始めた。現在は退職したけれど……。
そこで一人の女性と出会う(以下、後輩ちゃん)。
後輩ちゃんはどちらかというと趣味も思考も嫁に似ていて、もしかしたら嫁と仲良くなれるかも……と思った。そして僕は覚悟を決めて、聞いてみることにした。

「突然だけど、僕の妻が後輩ちゃんと趣味とか似てるんですよ、よかったら会ってみてくれませんか?」

いきなりこんなこと言われて、きっと戸惑ったに違いない。しかし

「わたしで良ければ!」

と笑顔で言ってくれた。
その後、職場に遊びに来た妻と少し話をして、その後何度か遊んで、すぐに仲良くなったようだった。趣味が近い、という僕の読みは当たっていたようで、2人で色々僕の知らない話で盛り上がっていたようだった。
だけど、後輩ちゃんと妻にはひとつだけ大きな違いがあった。

それは後輩ちゃんがとにかくお洒落さん、ということ。服も爪も髪型も、こだわり派。
妻は仕事の兼ね合いもあるけど、お洒落する暇ねえ!ファンデーションよりドーラン顔に塗ってる事のが多い!と言っているのを聞いた気がする……。

ある日家に帰ると、マニキュアがいっぱい置いてあった。妻に話を聞くと、
「後輩ちゃんに借りた!」
とのこと、色々話を聞いて、まずはネイルから!って事になったそうな。
それから、妻はネイルを楽しむようになった。

僕にとって、それはとても喜ばしい事であった。
妻に友達ができ、そして新しい趣味ができたのだ。

ある日。おでかけに行く前。

「うわー。時間やわー!でも、ネイルだけはさせてー!!」

今まで無頓着だった場面でも気にするようになった。それだけの事でもとても嬉しくなった。嬉しくてちょっと泣いた。

後輩ちゃんには本当に感謝している。
未だにネイルの事を爪!と平気で言う僕にはきっと永遠に楽しみを与えることはできなかったであろうから。
一度感謝を伝えようとした時に思いっきり後輩ちゃんの前で嬉しさやらなんやらで感情が爆発して泣いちゃったので、そこはほんとごめんなさい。三十路の男が3つ下の後輩の前で泣くのは改めて考えなくてもヤバいと思う。
でもそれだけ嬉しかったんです。

なにがあってもきっとこの嬉しさは返していきたいし、これからも嫁と仲良くして行ってくれるとますます嬉しいなぁと思う。すでにマニキュアをシェアしあっているようだけど……笑

長くなったけど、これが妻がネイルにハマるまで、鬱病から再起するタイミングで友人と趣味に出会えた話です。

話が途中あっちいったりこっちいったりしたけどお許しください。

とりあえず、今日も笑顔の彼女、その爪には星が煌めいています。きらきら。

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