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篭田 雪江(かごた ゆきえ)
2020年6月22日 16:55
※本文は投げ銭制です。全文読めます。 目をつぶりながら、おれは千春の奥にある指を動かし続けている。 オレンジ色の残光が、瞼の裏に残っている。それは日によってかたちが変わる。ある時はうさぎだったり、ある時は壊れたコップだったり、ある時はいつかどこかで出会った、でももう思い出せないひとだったり。でもたいていはぼんやりした、水ににじんだ絵の具みたいな影に過ぎない。今日は、そうだ。 耳に、千春