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「多読の戒め」

「多読の戒め」

  「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日に多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失っていく」

「読書について」(ショーペンハウアー)P.127


 現代では新刊が絶えず出版され、速読法等、読書量を増やす方法が推奨されがちですが、ショーペンハウアーのこの言葉は、読書の仕方を再考するための貴重な助言となります。

 ショーペンハウアーは、こうも言います。

 「多読は精神から弾力性をことごとく奪い去る。つまり、自分の思想というものを所有したくなければ、そのもっとも安全確実な道は暇を見つけしだい、ただちに本を手にすることである」

同上 P.7 

◆「他人の思想の運動場」

 以前、私も「積ん読」本が積み重なった時、次から次へと、読んだ本を消化しきらないまま、読書に明け暮れた時期がありました。

 その時、まさに、自分の考えがどこへ行ったのかわからなくなった経験があります。それはまるで、頭の中が「他人の思想の運動場」となったようでした。

 「読んだ本の冊数」が大切なのではなく、読んだことから得た「知恵」をどう自分のものにしていくかです。

◆「消化」して「昇華」する

 読書は食事に例えられます。いくら栄養価が高い食事をしても、「消化吸収」できなければ意味がありません。

 同じように、読書もただ読むだけではなく、それを「消化」し、自己の成長に「昇華」させることが大切です。

 また、ショーペンハウアーは、読み終えたものを、いっさい忘れまいと思うことは、食べたものをいっさい、体内にとどめたいと願うようなものだと言います。

 体も精神も、自分に必要なものだけを取り入れます。読書においても、すべてを覚えておく必要はなく、忘れても良いのです。

 多くの本を読む必要はない
 本を読んでも忘れてもいい

 これらの考えは、精神的にも楽にしてくれますね。


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