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「八ヶ岳と富士山の背くらべ」

「昔、八ヶ岳は富士山より高かった」
 
 「富士山の女神(浅間神社)と、八ヶ岳の男神(権現神社)が高さを競って争いました。
  喧嘩の仲裁に入った阿弥陀如来は、高さを確認するために、両山の頂上に樋をかけて、中央から水を流しました。
  その結果、水は富士山の方に流れ、八ヶ岳の方が高いことが分かりました。
  負けた富士山は、悔しさのあまり、八ヶ岳の頭を太い棒で叩きました。
  すると頭が割れて、八つの峰(硫黄岳、横岳、阿弥陀岳、赤岳、権現岳、旭岳、西岳、編笠山)に分かれ、以前より低くなってしまいました」
  以上が、山梨県に伝わる背くらべ伝説です。
  なお、その時、頭を割られた八ヶ岳が流した涙が湧き出ているところが、現在の山梨県北杜市の「大泉」という地名になっているとか。

◆「噴火活動の歴史から」

  さて、現在の富士山は、標高3,776mで、八ヶ岳の最高峰、赤岳(2,899m)より、877mも高いのに、なぜこのような伝説が伝わっているのでしょうか。 背景には、八ヶ岳と富士山の噴火活動の歴史に根拠があると言われています。

  約25万年前、八ヶ岳は、古阿弥陀岳という、標高3,400mの山であり、一方、富士山は、小御岳火山という標高2,400mの山でしかなかったようです。
  約10万年前、古阿弥陀岳は大崩壊期に入り、山頂をほとんど失い、現在の山容となりました。それでも、赤岳(2,899m)と比べても、まだ当時の富士山より高い状態でした。
  そして、約1万年前から富士山の火山活動が始まり、富士山は、どんどん高度を上げ、3,776mまで達し、遂に日本一の高さになりました。
  ということで、1万年前から、日本人が住んでいたか定かではありませんが、伝説どおり、地質時代の両山の背くらべは、八ヶ岳に軍配が上がるようですね。
  伝説も、侮りがたい事実を伝えているようです。

  写真は、長野県の日本百名山、車山(1,925m)から撮った、八ヶ岳と富士山のツーショットです。


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