見出し画像

お茶杓の銘と、お点前の清浄な空気感の話

 先日は、午前11時頃から銀座のお茶室で茶道のお稽古に行ってきました。裏千家では、お点前の最後に問答があって、お道具について主人と客の間でやりとりをします。お稽古では、
「お茶杓の銘は?」
 と聞かれて、自分で考えてきたお茶杓の銘を答えます。他のお弟子さんたちは俳句の季語で答えるのが普通です。でも私は古今和歌集の一句からとった一言を、お茶杓の銘として答えています。
 これは以前、先生が、
「お道具の銘は、古今集から取られたものが多いんですよ」
 という話をされたことをもとに、私が勝手に始めました。もう1年ばかり続けていますが、今日は先生にはっきりと、
「先生。これから先も、これまで通りに古今集の和歌からお茶杓の銘を取ることを続けても、よろしいでしょうか?」
 とお聞きしました。すると先生は、
「構いませんよ。和歌からお茶杓の銘を探すのって楽しいですよね、ホッホッホッ」
 とお許しをいただきました。その時、お茶室のあちこちかから、声を抑えた姉弟子たちのクスリッと笑う声が聞こえて来ました。
 今日は先生のその一言だけで、心が満たされました。

 本当は、その日のお稽古に関して、もう一つ書きたいことがあったのです。それは、空気感が違う若い男性のお点前の感想です。本当に、その男性のお点前は、彼から伝わる空気感が全く違っていたのです。そこで、先生に、
「あんなに空気感が違うお点前ができるのって、育ちの違いですか?」
 とお聞きしました。すると先生は、
「そんなことはありません。育ちの違いは18歳まで。それ以降は、ご自分の努力です。それに彼は習い始めて、7年ですから」
 とのこと。私は、
「ならば、こんなおっちょこちょいの私でも、ああいうお点前ができるようになれるわけですね」
「ご自分の努力次第でね、ホッホッホッ」
 大変に蘊蓄のある先生のお一言を、いただきました。
 

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。