黒い花

世にも不思議な黒い花。

自然の中に存在する。

花といえば白い花しか知らなかった頃、初めて黒い花を見た。

花は何色にも染まらない、そう言っていた。

黒い花は一輪で咲いている。

ひとりでは生きていけないけれど、ひとりは嫌だけど、時々ひとりになるのが好きだと言っていた。

百花繚乱の中で、一際目立っていた。

他の花から妬まれていた。

孤高の美しさを羨ましがられていた。

目立ちたくなんかない、そう言っていた。

男たちは、寄ってたかって、黒い花に気に入られようとしていた。

男たちは、寄ってたかって、黒い花を我が物にしようとしていた。

黒い花を手に入れた男は時々いた。

黒い花は男に尽くした。

誰よりも優しく、男を大切にした。

けれど男は黒い花のように、気遣いや思い遣りは示さなかった。

そして、ある日、黒い花は男の元を去った。

黒い花は、そうして、何人かの男と出逢っては去った。

その度に、黒い花の心は傷ついていった。

その傷は、黒い影に隠れ、誰も気づかなかった。

黒い花は、絶望と落胆と失望を繰り返していった。

黒い花は、ただひとりの男を求めるようになった。

男はまだ現れない。

黒い花は一輪、咲いている。

いつかは望みが叶うだろう。

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