事実は真実を歪める
目に見えるものが真実とは限らない。
古い訓えだ。
事実と真実の違いは、誰もが知っている。
そして、誰もが大切にしているのは、どちらかと言えば、事実の方だ。
真実とは、嘘偽りのない解釈だからだろう。
事実はひとつだけだが、真実はひとつ以上ある。
そして、真実は、時として苦い。
また、事実は、時として真実を歪める。
わかりやすいのは、騙し絵や錯視などだろう。
たとえば、ここに挙げた絵は、平行に引かれた線というのが事実だ。
しかし、脳は、線は斜めだと認識する。そして、その認識に嘘偽りはない。
騙し絵や錯視を持ち出さなくても、目に見えるものが真実とは限らないのは、身の回りにもあるだろう。
人は、事実をありのままに捉えることはできない。
人は、感情や感覚、心情などによって外界や事象を認知する以上、それは歪められてしまう。
それを認知バイアスという。
そして、誰も、認知バイアスから逃れることはできない。
唯一、できるとしたら、自らの認知バイアスの傾向を知り、どんな思考の偏りが事実を歪めているかを把握することだろう。
そして、少しでもその歪みを矯正することだろう。
だからといって、それが直るかどうかはわからない。
それだけ、認知バイアスとは強固で頑固なのだ。
ただ、自分の認識を過信しないこと。
自分が思うことが嘘偽りのない真実だとしても、他人の真実とは違うということを知ること。
そこからスタートするしかないのだろう。
他人の真実を受け止めて、受け入れられるかどうかは、また別の問題だ。
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