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鍵盤楽器音楽の歴史(5)15世紀ドイツ

15世紀後半の鍵盤音楽資料はドイツに集中しています。ヨハネス・オケゲム (c.1410-1497) 、ジョスカン・デ・プレ (c. 1450-1521) などが活躍したルネサンス・ポリフォニー音楽の中心地であるフランドルからは何故かオルガンの音が聴こえてきません。

1448年のアダム・イーレボルクのタブラチュアにある5曲の前奏曲 Praeambulum は、この種の曲の最古の例で、声楽や舞曲に依拠しない「抽象的」な鍵盤音楽の最初のものです。これには最初のペダルの使用の指示のある曲も含まれています。

さらに、前奏曲はそれぞれの範囲内で他の音調に適用しうるとの説明が付されており、すでに移調が一般的な技術であったと考えられます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ileborgh_Tablature

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1452年、コンラート・パウマン『オルガン奏法の基礎』"Fundamentum organisandi" 。

盲目のオルガニスト、コンラート・パウマン (c. 1410 – 1473) は当時最も優れたオルガニストとして名声を博しました。やはり低音声部上に装飾的な上声部を加えるやり方が基本です。例によってドイツ式オルガン・タブラチュアで記譜されていますが、小節線が書かれるようになりました。

https://imslp.org/wiki/Lochamer-Liederbuch_(Paumann%2C_Conrad)

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"Mit ganzen Willen wünsch ich dir"。そしてやはり声楽の編曲ですが、声部が増えて3声部です。3度音程を多用しているところから、パウマンの使用していた楽器は中全音律で調律されていた可能性が考えられます。

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ところで何でしょうかねこれは。

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同じくパウマンの周辺で1460年から70年頃に編纂された『ブクスハイムオルガン曲集』Buxheimer Orgelbuch は、250曲以上を収録した15世紀最大の鍵盤音楽集です。やはり多くは声楽曲の編曲で、それに加えて前奏曲や舞曲の旋律を元にした曲などが含まれます。
https://imslp.org/wiki/Buxheimer_Orgelbuch_(Various)

この第1曲の "Jhesu bone" はついに4声部となり、アルファベット表記が3段になっています。もう普通に線譜で書いたほうが早いと思うんですが。 

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232番 "Praeambulum sup C" はかなり大規模で手の込んだ前奏曲です。ここまで来るとさすがに中世っぽさはかなり薄れてきた感じがします。

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次からは16世紀に入ります。

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