執筆の動機と科学

最初の挨拶と執筆の動機

こんにちはカゲラボです.
最近思うところがあってnoteを始めてみました.
「いまどきブログなんて時代遅れ」そう思うところも少なからずあるのですが,文字だけで完結できる気軽さで,一応人に話す体でまとめられる媒体に記録しておこうと思い,ここに筆をとる次第です.

というのも私は普段とある大学で教員をしています.学生に専門分野に近いことを教える立場です.なので偉そうにも「最近の学生は~」とか色々いいたくなる立場にあります.さらに最近は政治経済にも興味(というか意見)が出てきて考えたことを何かに昇華したいと思っていました.そこで,おそらくあまり多くの人の目には触れないであろうnoteでその欲求をぶつけてみようと思うのです.

科学とは

さて,その第一弾として一番に適するものは何かというと「科学とは何か」でしょう.
私は幸いにも小学生のころから夢について聞かれれば「科学者になる」と言っていたものです.そのころを知る両親からすれば,現在理系の大学教員つまり研究者をやっている私は「夢が実現された」ということになるようなのですが,私自身としてはとんでもない.「科学者」とは対極の「工学者」になっているように感じるのです.もちろん「工学者」なんて言葉は私の造語ですが,私の科学に対する思想がこもっています.

一般に「科学」は「世の中の真理」を究める学問であるのに対して,「工学者」は「人間に役に立つもの」を究める学問なです.

例えば2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊先生は,私の中では生粋の「科学者」です.先生にまつわる逸話として,ノーベル賞を受賞された際にNHKのリポーターに「研究はどのようなことに役に立つのか」と聞かれて「まったく役に立ちませんね」とだけおっしゃった話は有名です.

そのやり取りは例えば下の記事から確認できます.
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20201115/se1/00m/020/001000d

これはすなわち,小柴先生は人間に役に立つのかどうかは一切関係なく,ただ人間の興味として研究を遂行されたことを意味します.これが「工学」と比較した際の「科学」の本来の考え方です.逆に「工学」とは,人間の役に立つことを念頭に商品や技術を開発することです.

科学と工学の対比

科学はよく「科学技術」と混同されることからも分かるように,両者の区別ははっきりとしたものではありません.しかし,知的探求心を満たす「科学」と,それを役立つものに利用する過程は本来別物なはずです.この「役立つものに利用する過程」こそ「工学」と呼ぶべきなのだろうと私は理解しつつ,現在は「工学」を教える立場にあります.
最近のノーベル賞の受賞研究は「科学」から「工学」に近くなっているように感じますし,大学等の研究も「何に役に立つか」を重視し,「工学」に基づいた方針の変化しているように思います.これは一見合理的とも見えるかもしれませんが,世界に果たしてきた数学や素粒子学等の役割を鑑みるに,非常にさみしいように思います.だって,本来役に立つはずのないけれど研究されてきたことが,結果的に人間の役に立つことだってたくさんあったのですもの.

※余談
大人気ゲーム「ポケットモンスター」シリーズには,ゲーム中にその作品で登場したデバイスなどを指して「かがくのちからってすげー」等と話すキャラクターが登場することが恒例となっていますが,私の心中としては毎回「それはかがくではなくこうがくだー!」と思っているのは内緒です.

(株)Pokemon

さて,この「科学」と「工学」の違いが現場ではどのような考え方を生んでいるのかは,また別の記事にて.

興味を持っていただけたらコメントなどをしていただけるとよろこびます.

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