Oasisを語りたい大学生


再結成、そしてツアー発表

2024年8月27日は、間違いなく歴史的な日になった。
それもそのはず、イギリスを代表するあのロックバンド、オアシスが再結成したというのだから。さらに、来年にツアーをする旨も発表。
前日からリアム(弟)、ノエル(兄)、公式のSNSで「27.08.24」「8am」と何やら発表があることが告知され、しかも三者揃って同じ投稿をしていたために再結成を示唆しているのではとネットがざわついていた。
これまでもするか、しないかと噂が立ってはメディアを通して互いに罵り合って進展せず、その度に信用をすり減らしていった、伝統芸だと見なしていったファンは多いだろう。そうして”再結成”と大々的に公表されても「どうせライブ前に喧嘩するだろ」「ステージに立って歌い始めるまでは信用できない」といった声を目にした。
さすがはこの兄弟、喧嘩に関しては数々の伝説を残しただけのことはある笑。

今週は、オアシスにとっては良くも悪くも歴史的な一週間だ。今から15年前の2009年、パリで行われた【Rock En Seine Festival】でノエルがバンドを脱退したことにより事実上のオアシス解散となったのが8月28日。再結成がアナウンスされた今日8月27日は奇しくもその前日となる。

8月27日分 billboard JAPANの記事より

今日の発表の為に何日も前から二人で顔を見合わせ、話し合っていたのだと思うと、何だか微笑ましく思えてくる。「奇しくも」とメディアは言ってるけど、絶対に日時のこと意識して発表したんだろう。
これは確信犯だ笑。ということで、15年にもわたって繰り広げられた兄弟喧嘩は終わったようだ(って解釈にする)。もう解散しないで、オアシスのままで仲良くLive Foreverしてほしい。

新しいアー写、かっけぇ

あの熱狂を体感していない、イギリスカルチャーに興味があるごく普通の一般男子大学生でさえも、”再結成”の文字を目にした時は興奮した。
なんなら発狂した。喉の奥から思いがけず、悲鳴に近い高音が部屋に響いた。それほど、この数年の間で虜になった自分がいることを再認識できた。

現在、バンドとしての彼らの存在はあまりにも伝説化されている。
当時の記録やニュースを覗いて「あ、またあんな発言してるよ」なんてことを思えるわけもなく、「なんか凄いことばかりやってたんだな」としか思えない。若気の至りなのか、二人が家庭を持つなどして一時よりも落ち着いたというのは感じられる。相変わらず口は悪いけども笑。
あのやんちゃさというか、成り上がり精神というか、その時代を生きていた人たちでないと体感できない”何か”があった気がする。解散した頃にまだ物心がついてなかった人は、歴史をなぞるように追体験することしかできなかった。オアシスという存在をタイムリーに感じられていない自分にとっては当時の人たちが羨ましかったが、もし日本でもライブがあるなら彼らを体感できるチャンスがあると思うと身体がゾクゾク、ワクワクしている。


音楽ルーツの分岐点

自分がnoteを始めた頃から観てくれている方は知っているかもしれないが、私の音楽遍歴にはミスチル(Mr.Children)一辺倒という、音楽への興味が非常に偏っていた時期があった。
高校生の頃に「B-SIDE」(B面集のアルバム)に収録されていたライナーノーツを読んでいて、初めて"オアシス"の文字を目にした。この時は「へえイギリスにはこんなバンドがいるんだ」くらいにしか思わず、聴こうと言う気にはならず。
後々調べて分かったことだが、お互いに結成とデビューの時期はそれなりに近く(ミスチルは1989年結成で3年後にデビュー、オアシスは1991年結成で同じく3年後デビュー)、ビートルズから影響を受けたという共通点があった。
聴くきっかけになったのは、大学1年生の終わりごろにアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が「E」という楽曲で「Live Forever」のギターソロをそのまま引用していたことを知ってからだ。
アジカンはオアシスからの影響はもちろん、ビートルズからも影響を受けていた。

良かったらオアシスのファーストアルバム「Definitely Maybe」を知らない人は聴いてみて下さい。

本当に傑作です。

僕はこのアルバムを友達に聴かせてもらって音楽に目覚めました。

 2003.11.25 アジカン日記より
(誤字があったためほんの一部加筆しています)

この文章を見つけるとすぐにApple Musicで検索し、勧められるがままに聴いた。
1曲目の「Rock 'n' Roll Star」を聴き終わったときの衝撃は、今でも覚えている。ボーカルであるリアムの透き通った声、シンプルでド直球のメロディ、脳内に溢れる轟音のギターサウンド。歌詞から伝わる自信満々さと、俺は自分の道を進むんだという強い意志。会場が大合唱に包まれる様子がもろに浮かんだ。こんな歌詞をみんなで歌っていて気分が上がらないわけがない、だって脳が喜んでるじゃないか。気がついた時にはもう虜になっていた。

アルバムの1曲目はリスナーの心を掴めなければ、2曲目を聴いてもらえない可能性があるくらいに重要性が高いと考えている。振り返れば、CDよりもサブスクが浸透している時代としては珍しい聴き方をしていた。でも1曲目から『今夜、俺はロックンロール・スターさ』と宣言し、そうした握力を堂々とひけらかすように露わにしていたから、自然と聴けたのだと思う。
自分はUKロックが好きなんだと実感した瞬間だった。それらの要素を取り込んだミスチルやアジカンが好きな理由って絶対にこれじゃん、と。好きなアーティストの要素、ルーツを辿って出会った最初のアーティストがオアシスだったことは、まさに運命だったと言っても過言ではない。
また、オアシスを聴き始めたことで「邦楽こそ正義」なんてくっだらない洋楽への抵抗は薄れていき、次へ次へと、のめり込んでいくのに時間はかからなかった。そうした要素を聴き慣れて自然とハードルが下がっていたからこそ、他のブリットポップも気軽に受け入れられた。ちなみにオアシスの次に聴いたのは彼らのライバル的立ち位置とされた、Blurだった。

こうして、ミスチルとアジカンがオアシスへ、オアシスが洋楽との出会いを繋いでくれた。


アタマ使ってる?

オアシスは洋画とも繋いでくれた。ガイ・リッチー監督作の犯罪コメディ映画「snatch」には、インストナンバー「Fuckin' In the Bushes」が使われていた。
ある日、番組表でふと目に入ったので録画して観た。登場人物が非常に多くて初見ではこんがらがったけど、目まぐるしい展開から目が離せなかった。ユーモア溢れるセリフやコミカルなシーンが多く、何度も笑わされた。素直に面白かった。

観返すと面白みが増す作品だった

それからはあのイントロを聴くだけで映画のシーンがすぐ脳裏に思い浮かんでくるし、映画の観客と一緒になって熱気に包まれている感じがして興奮する。気分を上げたい時には必ず聴く曲になった。
実際、ライブではメンバーの入場曲になっており、ファンには馴染み深いSEだ。会場にイントロのドラムが響くと観客は歓声を上げ、手拍子をし、飛び跳ね、拳を突き上げる。この光景が、また世界中で見られることだろう。
他のバンドにもありがちな要素でも、唯一無二の高揚感には誰もが酔いしれるはずだ。他のバンドを下げるなんて意識はなしに、彼らの格別さを感じる。


魅力しかない彼らの人間性

オアシスを好きになった理由として、メロディーや歌詞以外にもギャラガー兄弟の言動に惹かれた部分が大きい。先述の通りだがこの兄弟、とにかく兄弟喧嘩が目立つだけでなく、とにかく口が悪い笑。口を開けば誰かを貶し、自分から進んで喧嘩を売りに行く。それが平常運転なので、ネタ探しをしようと質問攻めにする世界中のメディアは多かった。
そのためか、今回の再結成について二人でインタビューを受けるだろうと期待するメディアは多かったようだが、リアム曰く兄弟喧嘩の引き金にもなりかねない過熱的な報道は避けたいらしく、それはないという。

今回、リアム・ギャラガーはノエル・ギャラガーと一緒にインタヴューを受けるつもりはないことを明らかにしており、メディアが個人的な質問をしてきたり、関係を引き離そうとしてくる恐れがあるとしている。

リアム・ギャラガーは「ファンの我々はバンドとしてのオアシスよりもリアムとノエルの関係性のほうが大きいことを認識しなければならない。その関係は長年にわたって疎遠だったし、メディアが確執を助長したことに留意すべきだ」というあるファンのツイートに言及している。

返信でリアム・ギャラガーは「尊重してほしいんだ」と述べた後、次のように述べている。「メディアが煩わしい質問をして粗探しをしてくるのを恐れているからインタヴューはやりたくないね」

10月10日分 NME JAPANの記事より

口の悪さについては、以前に旧Twitter(X)でこんな投稿を目にした。

「ギャラガー暴言カルタ」と名付けられたそれには、”あ~わ”までで暴言(や名言、迷言)が勢ぞろい。今の時代に言えば炎上するのは目に見えるようなものや、アーティスト生命が終わりかねないものがある笑。
それが許されていた、余裕をもって受け止められていた時代だからこそ輝いている言葉だし、内容の真偽はさておき、ファンはそれをわかってるのだと思う(過激すぎてバッシングを受け、撤回したやつもある)。この兄弟だから許せる、に近いんじゃないだろうか。
彼らは遠回しな表現を用いず、ク◯だと思ったら◯ソと言うのだ。個人的には二人の会話を聞いていて、Fワードが出てこないのをあまり見ない笑。

そんな音楽と人格のストレート性を武器に、彼らはデビューから2年と半年ほどの短期間で二つのアルバムを発表してどちらもヒットさせ、2日間の野外ライブ(俗に言うネブワース公演)で25万人を動員するほどのバンドに成長していった。
90年代のイギリスでは労働者階級出身者における成功が、サッカー選手になるかアーティストになるかの二択、という話が囁かれていたそうだ(今は不明)。そんな底辺からイギリス国内に留まらずロックの歴史に名を刻むスターに上り詰めた彼らは、まさに時代の寵児だったに違いない。
そして2009年の兄弟喧嘩でノエルが脱退して事実上の解散状態となり、その後は互いにバンドを組んだりソロ活動に励んだりという15年の時を経て、今に至る。
相手が大御所や過去に活躍したバンドであろうと言いたいことを遠慮なく口にし、口先だけで終わらず自分たちが歴史なんだと証明してみせた。自分としては有言実行というか、ただのビッグマウスでなくしっかり結果を残すというスタンスにも惹かれたのだと思う。

こんな兄弟、誰も憎めないだろう。誰が嫌がるんだろう。中流、上流階級の出身くらいか。ギャラガー暴言カルタが好きなら、みんなオアシス好きなんじゃないかと思っている笑。彼らと似たような出自、境遇を送ってきた人でなきゃ好きになれなかったりして。


2020年代におけるブリットポップ(再考)

ブリットポップが勃興して30年ほど経った現在、当時のシーンで活躍していたアーティストが音楽雑誌で取り上げられるなど、その音楽性に改めて目が向けられていることは自明だろう(以前の投稿でも触れた)。

ブリットポップに対する近年のメディアや音楽フェスの動向から鑑みて、どうやら注目されているのはオアシスだけではないようだ。
彼らのライバルとされたBlurは昨年に新しいアルバムの発表と再結成ライブを行い、サマーソニックにヘッドライナーとして出演。補足だがBlurとは別日程で、リアムがソロで出演していた。
また、来年の1月に行われる新しいフェス”rockin'on sonic”にはPULP、MANIC STREET PREACHERSといったブリットポップを代表するアーティストが出演することが決まっている(PRIMAL SCREAMは音楽性が多彩なので除いた)。

さて、肝心のオアシスはグラストンベリーなどの大規模なフェスに参加しないようだが、北米やヨーロッパ、オーストラリアでの公演が次々と発表されている。その流れでネットの様子からは日本でも彼らが観られるか、と期待の拍車がかかっていることが伺える。
もしそれが現実になるのなら言わずもがな、倍率が凄いことになりそうだ。会場はどこになるのか、何日間なのか、チケットの価格など、想像が止まらない。こんなにまたと無いチャンスを逃したら絶対後悔するんだろうな。
と、思っていたら、だ。

これまで世界中の国でこのような街頭広告が出現しているが、それらの国では必ずツアーの発表がされている。
ということは、まさか。


オアシス、日本公演開催決定!!!

来たああ!!!!!!!!!!!!!!!!!
うおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!
申し込むぞおおおおお!!!!!!!!!!!
当たれええええ!!!!!!!!!!!!!!

11月30日。結果が出た。先行販売は抽選で、やはり反響が大きかったのか倍率は高かったように思う。ドームだから当たるだろうと高を括っていた自分が甘かったことを感じた。
外れた。悔しい。
一般販売は先着順ということでどれくらい席が余っているかは未知数だが、アクセス集中の波に溺れなければ可能性はゼロではないはず。
席なんてぶっちゃけどこでもいい。彼らが直前まで喧嘩せず、ステージに上がってきても喧嘩せず、ライブ途中で中止せず、無事にライブが終わってくれるところを観られればそれでいい。贅沢は言わない。

さあ、この三年間を通してブリットポップ・リバイバルの年となるのか、個人的に注目していきたい。


Oasis night Tokyo

突然インスタに流れてきたアカウントから、再結成を祝して開催されるとのことで行ってきた。11月16日、渋谷チェルシーホテルにて23:00~05:00のオールナイト。ロックのこころというバーで一次会が行われるというので、本編前にエンジンをかけるべく参加した。燃料はもちろん、お酒である。
一次会ではまずジントニックを飲んだ。「Supersonic」に歌詞として出てくることをイメージされていたらしく、その名前で注文すると定額から100円引きされた。市販のやつは甘みが強いものが多いのでそんなに好んでは飲まないが、今回のものは後味が印象的で普段とは違う楽しみ方で飲めた。恐らく使っているトニックの苦味が強かったのだろう(素人目線)。後でハイネケンを瓶で飲んだ。どちらも美味しかった。

バーはバンドTシャツ(スウェット?)やモッズコーデなど、一目見るだけで彼らのファンだとわかるような身をまとった人たちで溢れていた。店内のモニターにはPVが流されており、観ながら飲んで雰囲気に浸っていると奥の方でアコギで弾き語りする方が現れ、本編前なのに「Whatever」が演奏されて合唱が起きた。段々とエンジンが温まってきた感覚があった。
ロゴ付きトップスを着ている人を見ると、一着も持っていない身なので「ああ着たいなあ買いたいなあ」という気持ちになる。しかしながらほとんどのものは限定販売されているケースが多く、見つけた時には既に売り切れていたり、中古で着古されていたり、自分の似合うように着れるサイズがなかなか存在しなかったりする。
程よくオーバーサイズで、袖丈とのバランスがとれたものがあったらいいなと思う。後で探してみよう。こんなわがままが叶うなら嬉しい。

本編の会場、渋谷チェルシーホテル
ホテルっていう名前だけどライブハウスだった

本編が始まる15分前にバーを出て歩いていくと、上り坂には既にライブハウスからと思われる長蛇の列ができていた。道行く人に不思議がられてこちらをチラチラと見られながら開場を待つ。そりゃ、夜の23時前にして行列ができているのを目にして、驚くのが普通の反応だ。11月中旬とはいえ、夜でもブルブル震えるほどの寒さはなかった。お酒を飲みながら歌ったことで体が温まっていたのもあるだろう。
写真を撮ってから階段で地下へ潜っていくと、受付でギターのピッグを渡された。ドリンクと引き換えです、とのこと。それを握りしめながら会場に入ると、おお、いかにもライブハウス、という雰囲気に呑まれながらカウンターにできた行列に並び、ウォッカトニックを注文。
本日三杯目。さっき飲んだジントニックと比べたくて頼んだ。ウォッカの方はジントニックよりも手軽に飲める機会が少ないように思う。居酒屋にありがちなカクテルではなく、バーに行かないと飲めないような少しレア感がある気がする。ジントニックよりもさらにすっきりした味わいだった。今度、ウォッカを買ってカクテルを作ろう。
エンジンはもう温かいを通り越して、熱くなっていた。

DJの人たちが流していたのはオアシスだけでなく、ギャラガー兄弟各々のソロやバンドに加えてKasabianやFontains D.C.、Chemical BrothersなどのUK勢、The KillersやWeezerといったUS勢、その他インディーロックといった洋楽のオンパレード。メインはやはりオアシス。
原曲以外にもカバー曲やテンポを少しアレンジしたバージョンなども流され、聴いたことのない曲には新鮮さをもって耳を傾けた。知っている曲では、もちろん声が枯れるくらいに大合唱した。
また、運営側がただ歌うだけでは飽きさせないような工夫をされていたように思う。膨らませた風船を観客に投げて打たせたり、光るリングを配って手首に着けさせたり、周囲の人と繋げて大きな円を作らせたりしていた。
そうした取り組みをDJの方々が率先して行っていたのが印象的だったし、単にクラブイベントでなくライブさながらの盛り上がりを作り出す心がけというか、心の底から観客を楽しませたいという意識が伝わってきた。
おかげさまで楽しめました。ありがとうございました。

会場の出入口にて。フライヤーのクオリティが高い

一次会にも本編にも、とにかく若い人がたくさんいた。その場の平均年齢にしても30代弱くらいだったと思われる。意外だった。だって30年ほど前に表に出てきて最後に活動していたのは15年前、物心ついたころには解散していたバンドなのに。
自分と同世代やそれにほど近い年齢の人たち、もしくは当時のオアシスを体感していたような人たちが同じ場所に集って酒を飲み、日を跨ぎながら大合唱に大合唱を重ねる、という貴重な経験ができた。夜更かしやオールのカラオケともまた違う世界を見ることができたというか、新しく自分のコミュニティを広げられたようで好奇心や探求心が刺激されたのを感じる。
深夜から朝まで大声を出していたんだから眠気は無いな、と思っていたらずっと立っていた疲れからか、帰宅して椅子に座るとそのまま3時間ほど寝た。なんだか心地の良い疲れだった。

そして奇遇にも、二年連続で誕生日を渋谷で過ごした。
21歳の抱負は、希望する会社から内定通知を貰うこと。それだけ。