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BCG後、初の内視鏡検査

春の雰囲気を素直に受け入れられない検査前

2018年、最後のbcg治療が終わってから2週間かそのくらいで新しい年度が始まった。至るとこで桜が咲き乱れ、まちには出会いと別れ、新たな旅立ちが溢れる。

 春の空気は好きだ。つぼみが膨らみ始め、春の空気が漂い始める2月。
虫や動物が、植物が蠢き始める3月。そして、春の陽気がそこかしこに溢れ、新た旅立ちの季節となる4月。

 毎年毎年、春は大好きで新たな季節と出会いにワクワクするのに、今年はずっと気持ちが晴れなかった。
年度の仕事を終えて会社を出る時も、新たな職場でのプロジェクトmtgに出る時も、どこかでずっと、春を迎えられる気持ちになれなかった。
街角の笑顔、春の営みを受け止めることができなかった。仲間との約束も、旅の予定も立てられなかった。

 もし再発していたら、すぐに手術に向けたスケジュールを立てないと。再発していたとして、もし浸潤していたらどうなるんだろうか。
BCG治療中に再発するということは、BCGが効かなかったということだから、薬を変えなければいけないのではないか。

 前日まで、緊張して何度も夢を見た。見つかる夢、緊張して待つ夢。
こんな時にばかり調子良いとご先祖さまに言われそうだけど、でも何度も見守ってくださいと祈った。

迎えた当日、何度も聞こえる撮影音

 膀胱鏡当日。自分で想像していたよりも緊張していた。夫と話している間は気が楽だったが、ちょっと忘れ物をして取りに帰る間、お手洗いに行く時、一人になると息がつまる。1人でくることも考えたけれど、付いてきてもらってよかったと思った。

いつもよりも早く呼ばれる。1週間前に細胞診を出しているので、まずはその結果を言われるだろう。

「細胞診の結果ですが、クラスⅡということで問題はありません」
「潜血もありません」

 聞いた瞬間、夫は安堵していたようだったが私は全然安心できなかった。
最初に癌が見つかった時も、潜血もなかったし、細胞診はクラスⅡだった。全く同じじゃないか。

「最初の検診の時も、潜血もなくて、同じクラスⅡだったんだ。だから本当に見て見ないとわからないと思う」検査室前で待っている間、夫にそう伝えた。
夫の顔は少し曇った。

いつも気丈に、気楽に振舞っていてくれる、だから私はとても過ごしやすいけど、実際にどんな心情なんだろう。聞いても、大丈夫しか言わないんだけど。

 検査室に入って膀胱鏡がはじまる。
しばらくなんの音もしない。何もないってことなのかな。どうか、どうか何もありませんように。正常に妊娠する90%にも入れなくて、女性30代の膀胱癌て珍しい部類に入っちゃって、さらにBCGも効かないなんて言ったらあんまりだ。

 しばらくすると、カチッ、カチッと静止画を撮る音がする。たくさん撮っている。何かあったからなのか、どうなのか・・・。

「終わりました。抜いていきますね」

癌が見つかった時は、検査室では離さず診察室に戻ってから話された。今日は検査室で聞きたい。今聞きたい。
私が口を開く前に、先生が言った。

「明らかな再発は見られませんでした。詳しくは診察室で話しましょう」

どっと力が抜ける。明らかな再発ってなんだ?と思いながらも。

 診察室で画像を見る。膀胱壁にはたくさんの毛細血管見たいのが見える。BCG後の影響らしい。
「少し赤くなっているところもあるが、再発ではない。再発っていうのはこういうことだから」と以前の画像を見せてくれた。

確かにそう。全く違う状態。

「今後の治療方針ですが、まだお若いので、若い方で繰り返す方も多い。その度にBCG治療を行うと、膀胱自体が萎縮してしまう、固まってしまって 頻尿などに悩まされることも多い」
「なので、3ヶ月後にBCG治療という選択もあるが、浸潤しない3ヶ月を目安にした膀胱鏡検査を1年続けるという方針にしたい」

 個人的には、できるだけ再発を避けたかったので3ヶ月後のBCG治療もと考えていたけれど、話を聞いて自然な状態の膀胱と一緒に暮らしていくというのが良いかなと思い直し、治療方針を受け入れることにした。

痛いとか頻尿とかそういうのがなく血尿が出た時には、すぐに受診することを言われ退出した。

一旦の安堵。家族にも伝え、また安堵。

 ただ、こんな緊張をこれからもずっと持ち続けなければいけないということ。
いつかは再発するかもしれないということ、いつかは膀胱がなくなってしまうかもしれないということ。こういう状態とずっと付き合っていくということ。

膀胱癌の他の方のブログを見て、こんな風に付き合っていくんだなとどこかやっぱり実感なく眺めていたけれど、自分にもその時期が来たということ。
そんなことを感じた。

さて、次の仕事場に映る準備をしなければ。
移る前の旅はどこに行こう。

次は7月、何事もありませんように。そして何があっても良いように、この3ヶ月をまた精一杯やっていこう。楽しんでいこう。

 

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