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「きたかぜとたいよう」のその後

『きたかぜとたいよう』

イソップ童話、「きたかぜ」と「たいよう」が、通りかかった旅人のコートを、どちらが脱がせられるかと競う、有名な物語です。
 
最初に「きたかぜ」が、自身の風で旅人のコートを脱がそうとするも、逆に旅人はコートのボタンをしっかりと閉め、まったく脱がせることができなかった。

その後、「たいよう」が、これまた自身の熱で旅人を温め、暑くなった旅人がたまらず、コートを脱ぐ。結果勝負は太陽の勝利となった。
 
イソップの童話では、ここで話が終わり、哀れな「きたかぜ」の身の程をわきまえない愚かさが際立っていた。
 
しかし、本当にこれで終わりのなだろうか...。確かに旅人はコートを脱ぎ、最後には丸裸になって川に飛び込んだ。どうみても「たいよう」の圧勝です。
 
だが、元々「きたかぜ」は「たいよう」にこう言っていました。
 
『ふん。強いのは、俺さまにきまっている。おれ様がピューと一いきふきかければ。花も木も、家のやねだってふきとぶぞ』
 
つまり、別に旅人のコートを脱がせなかったからと言って、「きたかぜ」の力が劣っていたということにはならないと思うのです。
 
それこそ、暴風で木々を吹き飛ばし、川を荒れさせれば、まさに入水中の旅人はひとたまりもないし、旅人の行く先々の宿を吹き飛ばせば、それこそ困り果てるものでしょう。
 
そこまで行かなくても、旅人が川から上がったタイミングで、風を一いきピューっとすれば、なすすべもなく旅人は風邪をひくに違いないです。
 
『そうさ。風の力はすごいんだ!』
 
「きたかぜ」自身がこう言っているのです。今回の勝敗にめげずに、是非己のポテンシャルを生かして、再起をはかっていただきたいです。
 
とまあ、そんな事を考えてたある日のこと。
その日の朝は初夏にも関わらず、かなり肌寒かったので、私は当初厚着をして過ごしていました。
 
やがて太陽が照り出すと、とても暑くなったので、服を脱ぎシャツ一枚になった。
しかし、突然風が吹き荒れはじめた。急激に気温が下がり、薄着になっていた私は、身震いをする羽目になってしまいました
 
きっと、自身のポテンシャルを思い出した「きたかぜ」が、再起をかけて「たいよう」にリベンジを挑んだのでしょう。
 
その心意気はとても素晴らしい。是非とも「きたかぜ」には今度こそ勝利を納めていただきたいですね。
 
ただ、二人の身勝手な勝負に巻き込まれた旅人は不憫で仕方がない。
どちらが勝者でも結構なので、早く終わってほしいもの...。
 
凍える身体をさすりながら、そんな事に思いをふける日でした。

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