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書評:フッ素の化合物


読んだ本

石川 延男、小林 義郎 著、フッ素の化合物―その化学と応用、初版第3刷、講談社サイエンティフィク、1983年、237頁

分野

フッ素化学、有機フッ素化学、無機フッ素化学

対象

フッ素化学を総論的に学びたい人

評価

難易度:易 ★★★☆☆ 難
文体:易 ★★★☆☆ 難
内容:悪 ★★★☆☆ 良
総合評価:★★★☆☆

良著ではあるが上位互換が存在する

内容紹介

 化学は規則性と個性が車の両輪のような関係で成立している。原子価が最外殻電子配置で説明でき、同族列とよばれる一群の化合物があり、各員は似た 性質をもちながら一方では個徃をもつ。このことが化学の深さと面白さの根源になっている。この立場からフッ素の化合物を通読させて頂いたが、個性豊かなこれらの化合物の記述の部分は大変興味深かった。基礎から応用までよくまとめられて、日頃疑問に思っていたことに解答がえられたことも多かった。例えば飽和炭素と不飽和炭素についたハロゲンの反応で、フッ素が他のハロゲンの場合と較べて対照的な挙動をに対することに対する明雄な説明 やCF3の置提基効果に関する記述などである。現在ではフレオンからはじまってトリフレート基に至るまで家庭でも実験室でも、われわれは大変フッ素化合物と密接なかかわり合いをもって生活している。基礎化学では僅かしか教えないので、フッ素化学について、もっと知りたいと思っておられる方も多いのではないかと思う。このような時期にハンディーな形でフッ素化学の全般を手極よくまとめて頂いたことは、時宜を得たものと思う。本書はわが国化学界にとって一つの大きな収獲ともいえよう。閧心ある方の一読をすすめたい。(水野義久)
(引用:ja (jst.go.jp)

感想

 フッ素化合物の歴史から始まり、無機フッ素化合物、有機フッ素化合物、フッ素化合物の工業的応用、そしてフッ素の医薬・薬学的な応用と続く、フッ素化学の総論的な書物と言えよう。第1刷が1979年なので、やや古臭さは否めないが、フッ素化学の基礎を学ぶという観点からは、中身の古さはあまり気にならない。したがって、本来であれば自身をもっておすすめできるのだが、フッ素化学の総論的立ち位置の書籍としては、『フッ素化学入門2010』という名著が存在するため、これと比べると流石に見劣りする。ただ、次項で詳細を述べるが、当書は中古品が値崩れしており、プレミア or 電子書籍でしか買えない『フッ素化学入門2010』と比べて価格面での優位性がある。

購入

 記憶が定かではないが、確か学部生の頃、明倫館書店で300円で購入したものだと思われる。ネットでも大体は1000円程度で売られており、学術書としてはかなり手に入れやすい部類である。一方、『フッ素化学入門2010』は紙媒体だとプレミア価格の約15000円程度であり、非常に高額である。ただ、電子書籍が3,520円で売られており(★電子書籍★ フッ素化学入門2010—基礎と応用の最前線|三共出版株式会社 (sankyoshuppan.co.jp))、もし電子書籍でも平気な人は、2000円ほど高くとも『フッ素化学入門2010』の購入をおすすめする。どうしても紙媒体がいいという人は当書でいいだろう。

参考サイト

  1. ja (jst.go.jp)

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