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赤江かふお Kafuo Akae
2024年3月14日 07:11
作・画 赤江かふお朗読 奥村薫 僕の父は病院長で、僕は父の病院で産まれました。ええ、白い十字架の立つ。消毒液の匂いが好きでした。 幼い頃の僕は女の子のような巻毛でしたので、看護婦さん達はよく、足にまとわりつく僕にお菓子をくれたりしました。あの頃の街はたいそう賑やかで、誰ひとり新聞のニュースなど話題にせず、ただ目の前にもたらされていた富や幸せを、いつまでも終わりがないものであるかのように
2024年3月14日 08:01
作・画 赤江かふお朗読 奥村薫 この奇妙な、それでいて妖しい事件は、そもそもの発端からして、実に異常で、読者におかれては一種不気味なものと捉えられたとしても仕方の無い事である。 私がそれを初めて見たのは5月中頃の事で、まだ肌寒い中にもじっとりとした夏の空気を感じる夜半だった。 どうしても原稿の案があがらないので少し外の空気に当たろうと、近くの疎水沿いの道を煙草に火をつけ吸いながら歩いて