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掲載短歌まとめ
雑誌や本に掲載していただいたりラジオで紹介して頂いた自作短歌をまとめていきます。
木になった私に触れてその指で人間として息を吸いたし
灼熱のコンクリートに毛が生えて象の行進ランプと踊る
たそがれに中央線が向かってくティッシュのゴミはひろえなかった
恐竜の背骨のような廃線できょうだいだったときは知らない
雨粒が川面にとけてペンギンに会いにゆくのを見送っている
題「送」
こどもだと思われたくて信じてたサンタクロースが家に来ること
「プレゼント(クリスマス)」佳作
初雪も明日には黒くなってゆく残されているパフェにスプーンを
かが屋「パフェ」特選
ピストルの音でぼくらは走り出す 花火は今も怖いのですか
空気階段「関健 〜夏祭り大乱舞編〜」特選
ゆうれいのゆれる吊り革すずしげな折り畳み式人間車両
洗いもの裏返しだよ
(そのまんま着てまた脱げばほら元通り)
vol.35 テーマ詠「家事」佳作
言葉にも屈折率があるようでまた会いたいは好きじゃなかった
題「折」佳作
花束にされないですむ部屋にいて野草みたいに前髪結ぶ
ひとりだと食べ方汚くなっちゃうし、ありがとうって言うときないな
苦情処理電話のあとのため息で遥かに飛ばすたんぽぽのたね
寂しさの雨雲と住む母さんのおしゃべりにただ相づちを打つ
題「親に、子に思うこと」入選三席
「ん」が二つゆれてるような君の目がぼくを見つけて「あ」の型になる
テーマ「待ち合わせ」佳作
上あごの海苔は途端に海の顔、このまま増えてゆくかもしれぬ
あくびするとき限りなく猫になるあなたの下の八重歯を愛す
テーマ「あくび」佳作
寒い日は弱るからね、とタオル巻き朝の電車に精液も乗る
第66回短歌研究新人賞 予選通過作
今日採った卵子と同じ六個入り卵パックを落としてしまう
第66回短歌研究新人賞 予選通過作
ぱぱんぱと黒板消しの蝶の国 白い鱗粉吸ったらだめよ
この傘はジャンプ式よと言われれば開いたときに跳びたいこころ
題「傘」佳作
遮光された寝室 洗濯機のノイズ 胎児のころは無音を知らず
歯磨き粉のチューブみたいに搾られる私も電車を降りたいひとり
歯ぶらしでお風呂のかびをこするとき舌の裏から濁った唾液
かわいいと思えなくて、という人の子の履いてきた新しい靴
題「子育てをめぐって」入選
駅までの詰まった列で交ざりたい前からひびく感想戦に
テーマ「ライブ」佳作
バイトには直せなかったコピー機に制服脱いだ店長がゆく
お二人は兄弟ですか?割り箸でメンマをつまむ再会のとき
踏切の赤がちかちか射す顔で猫って苺食べないのと言う
テーマ「忘れられない人」
目を細め眺めるほどの春の日にきみの眼鏡の車窓を見てた
満月のドアノブぐんと手をかけて夜空の裏の色を知りたい
病名を小石の軽さで悲しめば母親もそうだったのなんて
vol.45 テーマ詠「健康」佳作
できるだけ高く飾りをつけたがる子らをツリーの星は見守る
吉川宏志選 テーマ「冬の星」入選
眼裏のような秋空 枯れた葉は小鳥のように墜落をして
ティラミスを地層のように掘りながら私の好きな私はここだ
厳かにまわせ夫の戻るのを義母と待つ間のコーヒーミルは
ピンポンが鳴ればかならずエプロンをはずし出ていた母の聖域
下り坂、ライトをつけて、自転車で どうも私が流れ星です
コンクリートのビルが欠片になってゆく こどもがほしい、ほしい、と思う
ゆうれいとしか遊ばない妹に友の居場所を聞かすエレベーター
掃除中だれも見てない隅っこでデッキブラシにまたがってみた
本日もゴジラの来ないこの街にいろとりどりの魚の切り身
がんばれ、と吹かれこころの平熱がちがう生き物なので、と思う
題「平」 大森静佳選 佳作
眠い日のゴミ捨て場にはクラゲたちああ海まではすごく遠いな
ほとほととアイスが落ちる愛おしさ地球という名の遊具に乗って
今日だって仕事に向かう新しい大陸みたいな雲とならんで
裏側の世界にきっとなくなった右のピアスをつけた私が
好きだった友達のこと人づてに 琥珀になりきれなかった蕾
筋斗雲みたいなねぐせ抱きしめて包まれなおす日曜の朝
できるだけたくさん詰めてにぎる米きょうも絶対負けないように
○2024年6月16日更新
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